異文化理解力 相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養

 育った環境の違う人と確かな信頼を築こう

わたしの好きな本の1冊”異文化理解力ー相手と自分の真意がわかるビジネスパーソン必須の教養(エリン・メイヤー著・田岡恵監訳・樋口武志訳/英治出版株式会社)”を紹介していきたいと思います。
母国ではない場所で、外国人の方々と一緒に働く人から多くの支持を得ているそうです。多様化の進む社会で大切なコミュニケーションの取り方を教えてくれます。


こんな人におすすめ
  • 海外の人と働く予定があり、やり取りに自信を持ちたい人。
  • 海外の友だち・恋人のことを深く理解したい人。
  • そもそも人との交流をもっと楽しみたい人。

本の概要           

文章の構成

日本語訳は易しく、読みやすいと感じました。

エリンさんが実際に外国人と仕事をしたとき、”文化的背景の違い”、”価値観の違い”から生じた様々な行き違い。お互いに良い仕事をしたいと考えているのに、なぜか話し合いはうまくいかず、チームの士気が下がる。そんな経験から語られる言葉には説得力があります。

なかでも注目は、経営幹部数千人にインタビューしてまとめたという

「カルチャー・マップ」

という図。これを見ると一目で各国のコミュニケーションの傾向をつかむことができます。ぜひ何度もチェックしてみてくださいね。


各々の価値観・育ったバックグラウンドの違いがある

インターネットを介し、多くの国が混ざり合っている今日の世界。
案外と外国人でも同じようなことに興味を持っているとわかるようになりました。とても距離が近くなったように感じられますし、きちんと誠意をみせて話し合えば、分かり合うことはできると思わせてくれます。

しかし、誠実に意見を述べたにもかかわらず、不快な思いをされることがある。

”ある人は、プレゼンテーションの途中で本当は意見を述べたかったにも関わらず、意見を挟む余地がなく不完全燃焼のミーティングになったと感じていた。

一方でプレゼンテーションを行った側は、意見が飛んでこなかったため、「自分の意見が理解されている・支持されている」と感じ、良いミーティングになったと感じていた。”


同じミーティングの場にいて、真逆の印象を持ってしまっていますね。
こんなことあるのか?と思うかもしれませんが、どうやらよく起こることの様子。

性格の問題だけでは片づけられない「文化の違い」というものにせまっていきます。


考え方の傾向を知ると接しやすくなる

相手へのメッセージの伝え方

なんといっても、主要国のコミュニケーションの傾向をわかりやすく図にまとめてくれているのがうれしいですね。
代表的なもの・日本人として納得しやすいものといえば、p59の図1-1「コミュニケーション」の各国分布でしょうか。

ローコンテクスト vs ハイコンテクスト


ですね。

p59 ローコンテクスト:良いコミュニケーションとは厳密で、シンプルで、明確なものである。
p59 ハイコンテクスト:良いコミュニケーションとは繊細で、含みがあり、多層的なものである。
簡単に言うと、世界で最もローコンテクストな文化なのはアメリカです。アングロサクソン系国家はだいたいローコンテクスト寄りに分布しています。

特にアメリカは、移民で成り立っている国。共通のコンテクストがほとんどない成り立ちであるため、伝えたいことがある時は曖昧さをなくし、できるだけはっきりと伝える必要がありました。


一方、最もハイコンテクストな文化なのは日本です。

あえて言わない。言わなくても”空気を読む”ことによって理解しようとする。
何を言うかよりも、何を意味しているかのほうに意識が向いているようです。
ローコンテクストなコミュニケーションでは、きちんと言葉にしていきます。それが日本人からすれば、「わかりきっていることを言わないでほしい!」と感じることもあるでしょう。

また、同じ字面の言葉であるにも関わらず、含まれた意味が全く違うものも多数存在しています。
例えば、イギリス人が
「私は……少しがっかりしました」というとき、
p93 イギリス人の意味すること:私は……に本当に動揺し、怒っています。
p93 オランダ人の受け取り方:そんなに問題じゃないな。


また、イギリス人が
「とても興味深いですね……」というとき、

p93 イギリス人が意味すること:好きではありません。
p93 オランダ人の受け取り方:いい印象を与えたぞ。


などなど。ビジネスの現場でこのような正反対の印象を与えあうのでは、交渉がうまくいきません。同じことを言うにしても、伝え方・やり方を変える必要があるのです。

礼節においては注意が必要

では、相手を評価しようとするとき、同じように基本のコンテクストに沿って伝えても良いのでしょうか?
実は、答えは否。

ローコンテクストの国でも、「ネガティブなフィードバックは間接的にする」という文化
の地域もあるのです。

例えばアメリカ。
基本的には相手にメッセージをはっきりと伝える傾向があります。
ところがネガティブ・フィードバックをするときには、柔らかく・さりげなく・やんわりとポジティブな言葉も含ませることが自然なのです。

一方のドイツ。
ネガティブ・フィードバックは率直・単刀直入・正直に伝えます。
間違いなく不適切だ、というような表現をはっきりと使います。

ややこしいですね。
誠実な態度を示したつもりが、相手には傲慢だと受け取られることがある…
文化を乗り越えて理解しあうことの難しさを感じさせます。


「信頼」されるための工夫

タスクベース vs 関係ベース
こちらも興味深いまとめです。

p213 タスクベース:信頼はビジネスに関連した活動によって築かれる。
p213 関係ベース:信頼は食事をしたり、お酒を飲んだり、コーヒーを一緒に飲むことによって築かれる。
タスクベースでは、いい仕事をしたら信頼につながります。
一方、関係ベースでは、まず親しみのある関係を築いているかどうかが信頼につながりやすいのです。長い時間をかけて相手を信頼していきます。

関係ベースである国で、どうにか結果をまず出そうと奮闘している間に、チームの人には嫌われていた…なんてこともあるかもしれません。
p304 わたしたちはみんな同じで、みんな違う
同じ人であっても、違う別々の人です。
分かり合うためには、

  • バックグラウンドを理解しようとすること
  • 自分のコミュニケーションの取り方をあらかじめ提示すること

これらを頭に置いておく必要があるでしょう。


感想             

信頼の考え方、時間の考え方、理想のリーダー像の考え方など、さまざまな観点から各国のカルチャー・マップがまとめられています。

海外駐在をする方々や、長期間の海外旅行をする方でも、読み込んでおくとコミュニケーションがとりやすいのではないでしょうか。

私は海外に長期滞在したことがありません。
海外で生活してみることは、将来絶対に叶えたいと思っていることに1つです。時期が来たら、本当にその傾向があるか、得た知識をもとにぜひ検証してみたいですね。そしてナチュラルに溶け込んでみたい。

もちろん、これがすべててではないと思います。
あくまで”傾向”であり、一人ひとりを見ていけば、もっと複雑なものでしょう。
私でさえも、日本人ですが、タスクベースだと思います。良い仕事をすることが信頼につながると考える。一緒に食事をすることが信頼につながるとは思えない。ですが時間は厳守だと思う。対立も避けたい。…人それぞれだということです。

この本は海外で働こうとする人向けに書かれたビジネス書のようですが、日本人同士のコミュニケーションにおいても大いに役立つと思います。

それぞれが違うバックグラウンドを持ち、
別々の価値観を持ち、
コミュニケーションの取り方に違いがある。

傷つけたいわけじゃないのに傷つけてしまうこともあるでしょう。
誠実であるとはどういう態度なのか、謙虚であるとはどこまでなのか、私もよく悩むことです。
自分とは異なる”異文化”を持った他人と関わるのだから、違って当たり前。この本が教えてくれた
  • 相手を理解しようとする姿勢
  • 自分のコミュニケーションのやり方をまず示すこと
これらを真似していきたいと思っています。

そう考えると、相手を攻略するようなゲームにも思えてきますね。

少し失礼な響きかもしれませんが…違いを味わい楽しめるような人生にしたいと考えています。


まとめ            

  • 海外でビジネスをする際の実践的なヒントが得られる1冊
  • メッセージの伝え方を工夫しよう
  • それぞれのコミュニケーション方法についてすり合わせることから始めよう

文化の違いなのか、性格の違いなのかを見極めることは難しいかもしれませんが、相手を理解しより良い関係を築こうとするなら、きっと役に立つ本です。
ぜひ読んでみてくださいね。



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