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5月, 2022の投稿を表示しています

宇宙を学ぶ~わかりやすいものから専門的なものまで

 宇宙を知ると自分のことも見えてくる 私が読書が好きになったきっかけの1つでもあるのが 「宇宙」 というテーマです。 なんだか小難しそうだな…と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、宇宙を知ると普段悩んでいることが馬鹿らしく思えてきて、心が救われることが多いと思うのです。 宇宙は私たちを産み出した原点。そしてほんの100kmほど空へ行けば、そこには宇宙が広がっている…遠いようで近くに、その正体は謎のままにある宇宙。実に神秘的ですよね。 ここでは、スピリチュアル的なもの、まだ科学で実証されていないものは省き、科学者たちの研究の結晶としてまとめられている本を何冊か紹介していきたいと思います。 こんな人におすすめ 宇宙の成り立ちについて知りたい人 宇宙研究者たちについて知りたい人 おすすめの本紹介    宇宙の誕生と終焉 最新理論で解き明かす!138億年の宇宙の歴史とその未来(松原隆彦著/SBクリエイティブ) 宇宙がどのように始まり、今はどのような状態で、今後どのように終わると考えられているか?まず大枠として宇宙の基礎知識をゲットしましょう。 こちらの本はオールカラー。とても見やすく、解説の図がとにかくわかりやすいです。初心者でも宇宙のインフレーションから膨張、予測不能の未来像までを知ることができると思います。 ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで(スティーヴン・ウィリアム・ホーキング著/林一訳/早川書房) 「宇宙の誕生と終焉」の中に、「ホーキング放射」という言葉が登場します。 これは宇宙研究の第一人者だったスティーヴン・ウィリアム・ホーキングさんから取った名前です。 宇宙のことを知るのにホーキングさんのことは避けて通れません。筋萎縮性側索硬化症(ALS)という難病を患いながらも、死ぬそのときまで宇宙に関する独創的な研究・執筆活動を続けたという、類まれな精神力の持ち主です。 研究者としての彼が、できるだけ一般の人にもわかるようにとかみ砕いて執筆してくれているのが本書。それでもやや難解なところがちらほらあります。計算式も多数登場しますね。 宇宙の始まり、終わり、そしてなぜ在るのか?秩序あるものから無秩序へと移行してきた宇宙の”答え”を人間の知性が見つけられるときは来るのか? 彼が理解していること、考えられる可能性を惜しみなく紹介してくれています。 「量

The Legends of King Arthur : 10 series

 アーサー王物語を簡単な英語で読もう 私はもともと世界各地の古代神話がとても好きなのですが、アメリカ人のお友達からぜひ全体を読んでみてとおすすめされたのが アーサー王物語 でした。 あらゆるゲームにアーサー王のエッセンスが入っていること(キャラクター名、武器、ストーリーなど)は知っていたのですが、そういえば全体を読んだことがないと気づきました。 そこで検索したところ ”The Legends of King Arthur(Tracey Mayhew/SWEET CHERRY PUBLISHING)" という10シリーズを発見。とても面白かったので、ここで紹介します。 本の概要         文章の構成          全編英語 です。しかし 1冊1時間以内くらいで読み終わる難易度 にはなっています。英語圏だと小学校くらいの子ども用とのこと。Non-nativeとしては読みやすいのでありがたいです。難しめの単語も何度か出てくると覚えてしまうと思いますね。 挿絵はさすがアメリカ…というなんともゆるい線のタッチで描かれた挿絵。スヌーピーのシリーズとよく似ています。個人的にはGuninevere(グネヴィア)はもっと絶世の美人感が出ているのだろうと思っていたのに…むしろ怖い。そんな仕上がりです。 古代の神話になると、著者によってさまざまな解釈がなされ、オリジナルのストーリーが加わっていることもあります。何度もリテイルされているうちに、物語が変化してしまうようです。今シリーズはおおむね本来の物語通りだろうと思われますが、物語の大筋をつかむ気持ちで読んでください。 これで興味が持てれば、より詳細に描かれた本にも挑戦できるでしょう。 各タイトルごとのあらすじ    10冊のおおまかなあらすじを載せておきます。 1:No Ordinary Boy(普通じゃない少年) こちらはアーサーが誕生する前のお話。 不思議な力を持つ子どもだったマーリンが、王の命令でやってきた怪しげな男Maganに導かれ、Tortigernに向かいます。 イギリスという国の建国に関わる重要な出会いのお話です。 2:The Dark Sorceress(暗黒の魔女) 家も家族も失った悲しい女性、Morganの物語。 戦争により父を殺され、母も父を殺した男に奪われたMorgan。彼女は復讐のために闇の

故:立花隆特集!知の巨人の本3冊のご紹介

 熟読・精読すべき本3選 今日は、一気に3冊ご紹介していこうと思います。知の巨人と言われた故:立花隆氏(文藝春秋ジャーナリスト)の本たちです。 本当に頭がいいというか、 調べつくしてから挑む取材 専門家レベルまで理解するから生まれる質問力 ぶれない文章力 など、尊敬しかなかったです。 私よりもずっっと読書家である方から、「文章力の高さ・賢さを感じたいならこの人」とおすすめされたのが立花さんの本でした。かなり厚みのある本で、読書にあまり慣れていない人にとっては挫折しそうな仕上がりですが、じっくり読んでみてほしいですね。 精神と物質        ”分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか 精神と物質(立花隆・利根川進著/文春文庫)” こちらは、ノーベル賞を受賞した分子生物学者の利根川進さんに立花隆さんがインタビューしたものをまとめてくださっている本です。基本的に、お二人の会話を中心に書かれ、時々立花さんの注釈・説明をはさみます。 利根川進さんとはどんな人なのか?なぜアメリカにわたることになったのか? 利根川さんが研究していたこととは何か? 科学者は生命の謎をどこまで解けそうか? といった内容が語られています。 ここがすごい! お互いの知識の深さが素敵です。 立花さんはジャーナリストで研究職ではないはずなのに、どれだけ勉強してからこのインタビューに挑んでいたのだろう?と感心するばかりでした。 そして、「なぜ?」と思うポイントが本当に鋭くて、中途半端な研究者であればしどろもどろになるであろうくらいの質問を次々繰り出します。地頭の良さ、気づきの能力の高さもうかがえます。 また、利根川さんのノーベル賞受賞に至るまでの道のりはがとても濃く、人生訓になるような言葉もたくさんちりばめられていますので、非常に学びが多いです。 インタビュー形式ですから、難しい言葉は省いてくれていますので、いくらか読みやすいと思います。 脳死           ”脳死(立花隆著/中公文庫)” 文庫なんですが分厚く…難解というよりは、とにかく重厚な作品。論立ての厚みがすごすぎでした。 30年以上前、厚生労働省が脳死→臓器移植という流れを推し進めるような脳死判定基準を出した。立花さんは、その基準をあらゆる角度から検証して批判していきます。 そもそも脳死とはどういう状態か? なぜ基準が作られたのか?心臓移植

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

 イギリスで暮らす母と息子の成長物語 こちらの本はノンフィクション。 イギリスのブライトンという街で暮らす父・母・息子3人家族のお話です。 ”ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(ブレイディみかこ著/新潮社)” というタイトルを見ると、一見小説か、さらっとしたエッセイを思い浮かべますが、内容は非常に考えさせられる「差別と貧困」がテーマになっています。 レイシズムだらけ・多様性にあふれた中学校への進学を選んだ息子が、そこで人とのかかわりを学び、たくましく育っていく様子を眺めていきましょう。 こんな人におすすめ イギリスの学校事情を知りたい人 差別や貧困問題について考えてみたい人 子どもの教育に役立てたい人 概要          文章の構成          母親からの目線で、イギリス・ブライトンの中学校へ進学した息子の様子が書かれています。 筆者の言葉遣いは非常に巧みです。心に刺さるメッセージがたくさん登場します。母親だけでなく、その息子もまた現状を非常にうまく言語化しているので、フィクションを疑ってしまうくらいです。 筆者が中学生の学校生活と関わっていく中で気づいたのは、 毎日の中に当たり前に差別・貧困がある ということ。現状のイギリス情勢を交えて書かれているのですが、中学校を舞台にしているからか、非常にわかりやすく納得しやすいと思います。 多様性の中で生きていかねばならない息子を母はありのままに見て、時に対話し、時に静かに見守る。とても素敵な家族の記録です。 息子自身が選んだ進学先    息子が通う公立中学校には、とにかく様々なバックグラウンドを持った子どもたちが通っています。黒人も、白人も、貧乏も、信じる宗教の違う人も。 息子は小学校はカトリックの学校に通っていました。別にそのままエスカレーター式に私立中学校に進学してもよかったはず。しかし息子は、学校見学をした後にそのブライトンの公立中学校への進学を決めます。 混ざっているその世界は、楽しそうな雰囲気に包まれていた。 大変そうだけど、面白そうに見えたのですね。 いざ飛び込んでみると、親としてはハラハラするような出来事も少なからず起こります。しかし息子はその1つ1つに向き合い、丁寧に対話をし、友だちと向き合っていくのです。 エンパシーを理解する     エンパシーとは、 自分で他人の靴を履いてみること=他

LIFESPAN(ライフスパン)老いなき世界

思い込みを越えて世界を変えよう 私たちは、年齢を重ねるほどに老いていくことを当たり前だと考えていますよね。 しかし世の中には、「ヒトはなぜ老いるのか?」と考え、真剣に老化を止めようと試みる人たちがいるのです。老化のメカニズムに迫り、これからの生き方を問う本、 ”LIFESPAN(ライフスパン)老いなき世界(デビット・A・シンクレア/マシュー・D・ラプラント他著/東洋経済新報社)” を紹介していきます。 こんな人におすすめ 老化のメカニズムについて知りたい人 アンチエイジングに興味がある人 年代別に何をすべきか知りたい人 概要           文章の構成           翻訳された文章です。訳はたいへん読みやすいと思います。ただとても専門的なワードも出てきますので、生物系・医療系専門用語に苦手意識がある方は読み進めるのが大変かもしれません。 文量もかなり多いです。 ただ、近年の研究の成果から、アンチエイジングし長く生きる方法を事細かに紹介してくれている本で、 今できることからこれから取り組むべきことまで指針をくれます 。 老化のメカニズム        老化はずばり、 DNAの損傷 であると表現されています。 たいへん専門的なワードが並びますが、 エピゲノムが変化する→染色体の末端を保護するテロメアが短くなる→タンパク質の正常な働きが失われる→代謝の変化により栄養状態の感知メカニズムがうまく調節できなくなる→ミトコンドリアの機能が衰える→老化細胞が蓄積して健康な細胞に炎症を起こす→幹細胞が使い尽くされる→・・・老化 という一連の流れがあるようです。 そもそも、老いることがなければ病気を防げるはずだし、死を先に延ばすことができるだろう。 老化=病気 と考えたほうがいい。これが筆者の意見です。 長寿遺伝子           体内の監視し、何を食べ、どれくらい運動しているかをみてくれているのが長寿遺伝子であるとされています。 その遺伝子の中でも、より長く健康に生きるために人の手で調節できるとされているものがある。その一つが サーチュイン遺伝子 です。 体内のほぼすべての細胞でたんぱく質を作ってくれているサーチュイン遺伝子。加齢とともにNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)が失われ、そのせいでサーチュインの働きが衰える。これが、老齢に特有の病気を発症する大き

学びのきほん 人生が面白くなる学びのわざ

学びをもっと身近で楽しいものへ 学ぶことはもっと楽しいはず。 ここ数年の私はそれを実感することが多くなりました。ちょうどそんなときに、NHK出版さんのシリーズからこちらの本に出会いました。  ”学びのきほん 人生が面白くなる学びのわざ(齋藤孝著/NHK出版)” まさに!今日はこの本の中から、学びのわざをいくつか抜粋していこうと思います。 こんな人におすすめ 学習を充実させたい人 子どもに勉強を楽しんでもらいたい人 学びの楽しくさせるわざ P10「真似をする」こと、それは学ぶこと 大人を真似て子どもは学習をしますね。そして、だんだんとできるようになっていく。つまりは、 学ぶことは生きることと同じ だと筆者は語ります。 学ぶことそのもの、または学んだことを活かして何かができたとき、私たちは幸福感を感じたり、誰かに必要とされることを嬉しいと思ったりします。 それがモチベーションになり、さらに没頭していくことができる。 自分の興味関心がどこを向いているのかで学びの方向を決めるのも良いでしょう。生きるために必要な学びを深めるのもまた良いと思います。どちらにせよ、 その場にとどまり続けること はできません。人・環境から常に何かを学び、「こうすればよかったんだ」「次はこうしてみたらどうだろう」「あの人のやり方、真似したらうまくいきそう」と試行錯誤を重ねて生きていく。 どんどん真似をして、自分自身をアップデートしていくのです。 直接の師、憧れの師から、徹底的に学びましょう。 P15 目標が明確 「目標を持って取り組みましょう」と学校の先生、部活動のコーチ、会社の上司…様々な人が言います。 耳になじみすぎてもはや大切さを忘れそうになりますが、やっぱり目標は大切です。 目標を立てるときは、チャレンジとスキルのギリギリのところをつく難易度のものに挑戦して、”フロー体験”をしましょう。 ※フローについては、IKIGAIという本の記事でも紹介しました↓ https://www.otonadokusho.com/2022/03/ikigai-japanese-secret-to-be-long-and.html フロー体験ができる難易度で目標を設定して取り組む。 これだけで学びの楽しさはぐっと高くなるはずです。 ニーチェの分類 ニーチェによると、今現在持っていない何かを得ようと取り組むとき、以

学びのきほん 本の世界をめぐる冒険

 本の歴史をたどってみよう 私は読書・本がとても好きなわけですが、そもそも本のルーツとは何なのか?この本を読むことでいろいろと教えてもらいました。 今日は ”学びのきほん 本の世界をめぐる冒険(ナカムラクニオ著/NHK出版)” を紹介していこうと思います。 こんな人におすすめ 本そのものの歴史が知りたい人 これからの本の在り方について考えてみたい人 概要          文章の構成          前回紹介したこちら↓ https://www.otonadokusho.com/2022/04/nhk.html NHK出版のシリーズになっています。 今回の「本の世界をめぐる冒険」では、 易しい口語で本の歴史を紹介してくれています。現代の紙の本になるまでの歴史を一気にまとめ読みできるので便利です。 文字が生まれたとき      もともと人が何かを伝えるとき、それはすべて”口伝”でした。 そこから文字というものが生まれ、石板や粘土、木簡、パピルス、そして紙へと記されて、過去のことを未来へ残すことができるようになったのです。 そのため、bookという単語には、「本、書き残す」という意味があり、そこから派生して「予約する」という意味も持つようになったようですね。 P25 占星術、農業、建築、政治、経済、医学、地理、歴史、数学まであり、当時の日常生活が手に取るように書かれていました。教科書、日記、手紙なども粘土板で発見されています。そう考えると、案外、人間のやることは、媒体が変わっても進化していない気がします。 あんまり変わっていない…と言われると、ほっとするような、残念なような。そんな気持ちになるかもしれません。 読書が大衆化されたとき    古代のバビロンなどにみられるクレータブレット(粘土板)は紀元前3000年ごろから存在していたようです。 葦でできたパピルス紙は、なんと紀元前4000年から5000年ごろの誕生。しかもパピルスに書いた文字は海綿で消すことができたんだとか。 P36 葦は人の住む島であり、家であり、船であり、遊ぶ道具であり、時にはおやつとして食べたりもします。 これほど使い道のある道具だったことからも、葦がさまざまな場面で比喩的に使われるのは納得できます。 ヨーロッパでは羊皮紙、中国では木簡・竹簡が使われていました。今のような木材パルプへと発展する前段階