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北欧こじらせ日記

 生き方を模索する正直なお話 フィンランドが大好きな筆者が書いたこちらの本。 ”北欧こじらせ日記(週末北欧部chika著/株式会社世界文化社)” では、自分が納得できる生き方をしようとするchikaさんの姿を見ることができます。 30代で、「仕事」というもの、「人生」というものがだんだんと形作られてきたとき、chikaさんはどんな決断をしたのか?覗いてみてください。 こんな人におすすめ これからの人生について悩み始めた人 自分の”好き”を仕事にしたい人 北欧好きの人 概要          文章の構成          漫画風の仕上がりです。筆者であるchikaさんがどのようにフィンランドと出会い、移住を決めるに至ったのかがわかります。 合間にフィンランドを旅するにあたっての豆知識、フィンランドの人と接する中での発見も盛り込まれているので、フィンランド旅行を考えている人にとっても役に立つことでしょう。 迷いながらも進む強さ     フィンランドがとにかく大好きだ。 その気持ち一つでお金を貯める。 チャットサイトで積極的に友だちをつくる。 思い切って旅立ち、ホームステイさせてもらう。 行動力 がとにかく素晴らしいです。好きなことのために一生懸命になれるのは、ある種才能のようなもの。自由さ、正直さを羨ましく思う人もいるかもしれません。 決して気ままというわけでなく、”フィンランド”を主軸に仕事を頑張り、就職を目指して活動するバイタリティは、仕事の決め方に悩む人に勇気を与えてくれるでしょう。 ただ常に幸せというわけではない。 大好きだからといって仕事にならない、と打ちのめされたお話は、何かにチャレンジしたことがある人なら共感できるはずです。 印象的なのは、 P75 好きなことに”携わる”んじゃなくて、好きなことを”守る”強さが欲しい… という言葉。 人間誰しも最初から満足できる道を選択できるわけではないからこそ、わからない中で自分のキャリア形成・人生設計を 模索していくお話として、参考になると思いました。 今までになかった選択肢を選ぶ 巡り巡って、最終的には「寿司職人としてフィンランドで開業する!」という目標を得たchikaさん。 営業職としてのキャリアとはまったく別の道。「フィンランド」を軸にすることは譲れないポイントだったようです。 だからと言ってすぐに実現できるわけ

ケーキの切れない非行少年たち

犯罪の背景にある要因は何か? 大変悲しく重いテーマとなりますが、子どもに関わるのであれば読んでおくべきであろう1冊をご紹介したいと思います。 ”ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治著/新潮社)” は、児童精神科医である著者が出会った非行少年たちのお話です。少年院にやってくる非行少年たちの背景にある問題についてまとめ、さらにその解決策も提案してくれています。 漫画化もされ、さらに続編も登場しているこのシリーズ。かなりショッキングな事実が語られていますが、この本に登場するような子どもたちを救い支えられるようになることが、彼ら自身だけでなく社会のためにきっとなるはずです。 こんな人におすすめ 非行少年たちの気持ちを考えてみたい人 身近な子どもの教育に役立てたい人 概要           文章の構成           精神科医である著者・宮口さんの易しい口語です。文量も多すぎず、読みやすい内容であると思います。 本の主旨・結論を言ってしまうと以下の通り↓ 非行少年たちの中には認知機能・知能の低下した子どもたちがいる。 そのため反省することすら難しい場合がある。 見る・聞く・想像する力が弱いことで、小さなころからイジメに遭っていたケースが多く、それが非行につながる。 困っている子どもの早期発見と支援をすることが必要。 このような内容です。実際に非行少年たちに接したことがあるからこそ紡がれる切実な問題提起。胸が痛くなる内容ですが、小さなころにSOSを発している…というケースはごく身近にもきっとあるはずです。 目をそらさず、読み進めていきましょう。 非行少年たちの背景       自分のしてしまったことを振り返り、何がどう間違っていて、次はどうすべきかを考えてみる…そんな認知行動療法の手法は、認知機能に問題がないことを前提として考えられている治療法です。 さらに、そんな治療に辿り着くことができる子どもたちは、そもそも比較的恵まれている。病院に連れてきてもらえるくらい親が理解があり、金銭的余裕があるということを意味します。 子どもたちの中には、 見るちから 聞くちから 見えないものを想像するちから が弱いことで、勉強が苦手・話を聞き間違える・内省できない・感情をうまくコントロールできない…などの症状を持つ子たちが少なからず存在しているのだそうです。 そして彼らは、幼いころから

もうろく帖

 自分自身が耄碌していく記録 時々、というか割といつも考えていることがあります。 いつ、どのように自分が死ぬか? ということです。 そして、その時を選択することがおそらくできないであろうことを考え、どういう「終活」をしておくか、考えるときがあります。 そんなとき、今日ご紹介する本、 ”もうろく帖(鶴見俊輔著/編集グループSURE)” という本がお供になってくれるのではないでしょうか。 寂しいような、悲しいような気持ちになるかもしれませんが、割と晴れ晴れとした気持ちも与えてくれるのです。 こんな人におすすめ 終わりゆく命について考えてみたい人 老いることについて考えてみたい人 概要          文章の構成          こちらの本は、著者である鶴見俊輔さんが69歳を過ぎたときに始めた記録です。自分自身の耄碌(もうろく)に気づいて書き溜めることを始めた 「覚え書きのまとめ」 となります。 新聞や様々な著作を読み、印象に残った言葉たちを日付と共にメモしていく。 そして時々、自分の中に湧き上がってきた言葉・考えを書き込んで、残していく。 決して長くはない、詩のようなメモ。 それは時に日本語、英語、漢文…と、様々な形をしています。 一度さらっと目を通しただけでは訳が分からない気もするのですが、二度三度とその言葉を読んでいると、なんだかじんわりと自分の中に染み渡ってくるものを感じることができます。 心に響くフレーズを見つけよう  ほとんどが1ページに1つのメモとなっていて、読み切るのはあっさりだと思います。 1つ1つ、なぜそれをメモしたのだろうか? 何が印象深く残っていたのだろうか? 想像しながら読み進める楽しさがあります。 そして、時々鶴見さん自身が書いている言葉が登場しますが、それがまた心強い。優しい気持ち、穏やかな気持ち、前向きな気持ちを感じ取ることができます。 …今はこの言葉がずっしり来たけど、来年にはまた違うかもしれない。 読む時々の自分の状況によって受ける印象が変化する楽しみがあるのではないでしょうか。 2022年9月現在はこの言葉!    P40 今ここにいる。ほかに何をのぞもうか。 自分の人生に高望みをしたり、あるいは低すぎる評価をしたり、苦しい気持ちはいつでも生まれてくる。そういうときは、この言葉を思い出したいと思いました。 P43 よぼよぼのじいさ

ペスト

名作をじっくり読む すっかりブログを更新できておりませんでした。 今回ご紹介するのは、 ”ペスト(カミュ著/宮崎嶺雄訳/新潮社)” です。 世界的に感染症が流行するようになってからは、再び世に注目されるようになったこちらの作品。 厚みのある1冊なので、読むのにかなり時間がかかってしまいました…。しかし、非常に考えさせられる良書です。時間はかかったけれど、読んだ甲斐がありました。 こんな人におすすめ 繰り返される感染症について考えてみたい人 じっくり古典を読みたい人 概要           文章の構成           タイトルの通り、ペストについて書かれた小説です。 オランという街で突如始まった感染症。それが過去にパリでも猛威を振るったペストであると断定されるまでの緊張感。そしてペストであると判断されてからのロックダウンの様子。その中に生きる人々の生活の様子や、感染症と戦うことになった人々の生活と心の様子… 事細かに描写されている分、ドキドキ感がありました。 端的な状況説明や感情の表し方は、なんとなくドストエフスキーの書いた小説のような印象がありましたが、著者であるカミュもドストエフスキーの本は読んでいたようなので、影響を受けていたのかなと推測します。 主な登場人物は以下の通りです。 医者のリウー。 ペスト対策の保健隊メンバーとして活動してくれるグラン、タルー、コタール。 血清を用意するため活動してくれる老医カステル。 偶然街を訪れていたジャーナリストのランベール。 主人公はリウーと考えてよいですが、どの人物たちが持つ背景・心の様子も興味深く、読み飛ばしできない魅力があります。 ネズミからヒトへ       ペストの始まりは、一匹のネズミの死から始まります。 次々に死体となって現れるネズミ。徐々に問題が大きくなっていく緊張感。人へ感染していく様と、それを認識していく人々の心… 2020年代に生きる自分たちの状況とも非常に重なるものがありました。私たちが感染症を認識し始める最初期のころも、こんな気持ちだったな…と思える表現が多々登場します。 現代と違うのは、伝染病であると認識されるまでのスピードでしょうか。 このオランの街のペストでは、まさか伝染病ではないだろうと思いこむ街の人々や、上からの指示がない限りは隔離しようとしない者たちの様子が描かれていました。 現代は

読書について

もっと言葉を大切にしようというメッセージ 今日は古典のご紹介で、読書が好きだという人にこそ読んでみてほしい1冊です。 ”読書について(アルトゥル・ショーペンハウアー著/鈴木芳子訳/光文社)” では、 自分の頭で考えるということ 読書をする際の心得 文章を正しく書くことの大切さ を教えてくれています。終始、ドイツ人の文章への向き合い方を壮大にディスっているような、正直すぎる言葉たち。現代の私たちの心にもぐっさりと刺さることでしょう。 こんな人におすすめ 読書する意味を考えたい人 自分が本好きであることに自信がある人 概要           文章の構成           ショーペンハウアーさんはドイツ人の哲学者。 彼はドイツ国民の文章への向き合い方・読書への向き合い方に疑問を呈し、彼なりの考え方を披露してくれています。言葉遣いがかなり”正直”なので、強い意志・憤り・熱意が感じられます。 章は大きく3つに分かれています。 ①自分の頭で考える ②著述と文体について ③読書について 最後は訳者の方の解説が入っています。 過去の偉人たちの歴史背景や、ざっくりとした著者の主張をまとめてくれているので、解説から読むのも良いでしょう。 自分の頭で考える:真理と洞察を自分で手に入れる こちらの章では、 「もっと自分自身で考えろ!」 ということを切々と語ります。 P6 どんなにたくさんあっても整理されていない蔵書より、ほどよい冊数で、きちんと整理されている蔵書のほうが、ずっと役に立つ。同じことが知識についてもいえる。いかに大量にかき集めても、自分の頭で考えずに鵜吞みにした知識より、量はずっと少なくとも、じっくり考え抜いた知識のほうが、はるかに価値がある。 手に入れた知識をどうやって使うのか? 数多ある知識を自分のものにする。それがやりたくて本を手に取り、読み込んでいるはずなのに、いつの間にかただのコレクターに成り下がっている… そんなことが昔のドイツにもあったんですね。そして、現代でも同じようなことをやっている気がする。 悩んだら本を読め! という昨今、確かに本はたくさんの選択肢を見せてくれますが、あまりにその選択肢も多くなりました。ショーペンハウアーさんの生きていた時代よりももっと多くの知識・解釈であふれているのですから、それを選択する能力・自分で考え自分のものにする能力を高めるこ

NASAより宇宙に近い町工場

 どの言葉も漏らさず読みたい1冊 「どうせ無理…」 その言葉をなくしたい。夢を持つってどういうこと? それを教えてくれる1冊が ”NASAより宇宙に近い町工場(植松努著/ディスカヴァー・トゥエンティワン)” です。 民間企業でありながら宇宙開発に貢献している会社。 いったいどうやってそこに至ったのか?見ていきましょう。 こんな人におすすめ 宇宙研究に興味がある人 夢を持ち続けてがんばりたい人 概要           文章の構成           植松さんの優しい語り口で進みます。 彼の生み出す言葉はなぜかすべて聴きたい。そんな気持ちにさせてくれます。 おそらく、彼が本当に実践したことで、考えたことだから響くのかなと思いますね。さらに、TEDなどで人に話す・説明する経験をされている方なので、どの話も非常に面白く感じられるのかもしれません。 植松努さんの仕事       植松さんの会社は、リサイクルで使われる特殊なマグネットの開発により資金を得て、宇宙開発に投資しています。 もともとは、「ロケットを飛ばしたい」という夢を叶えようとしていた植松さん。銀行はそんな夢物語にはお金を貸してくれず、自分で生命保険に入ってお金を借りたのだそうです。 そこから、自分たちでニッチな稼ぎどころを発掘。そこでこだわりのマグネットを開発しました。 現在の大量生産・大量消費時代は終わろうとしている。 モノを作ってたくさん売りたいから、壊れやすいものばかり作っている世間の会社たち。そんな波に負けず、壊れない・よりよいモノをつくるという信条を持っている植松さんは、周囲の人も惹きつけます。 現在では、世界に三か所しかない無重力施設の1つを、植松さんの会社で持っています。 お金をかけず、自腹でやっている実験施設。その利用にもお金がほとんどかからないため、世界中の色々な研究者たちが実験をしにやってきてくれるのだそうです。そこで、お金ではなく、 経験 知恵 人脈 を得ている。そのつながりが財産なのです。 ゼロからイチを生み出す     従業員に個性は必要なく、マニュアル通りにやってくれればそれでいい。 それが大量生産・大量消費の時代でした。昭和の戦後復興ではそれでよかった。でも今はもうその時代は過ぎ去った過去です。 現在必要とされているのは、アイディアだけで国を成り立たせるような、やったことのないよう

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

 結局、鳥好きな研究者のお話 今日は ”鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。(川上和人著/新潮社)” という本のご紹介です。 タイトルがなかなか奇抜。また、表紙のポップさも合わさってなんだか読む前から楽しい気分にさせてくれます。 こんな人におすすめ 鳥類学者に興味がある人 ニッチな学問の研究者の過ごし方を知りたい人 概要           文章の構成           著者である川上さんの「正直で毒舌」な話し言葉で書かれています。 鳥類学者のフィールドである小笠原諸島を主な舞台とし、どんな研究をしているか、どんなところを見ているのか、何のために研究しているのかが紹介されています。 章ごとにかわいらしい鳥の挿絵も登場。しかしもうちょっと島や鳥の写真・絵があってもよかったな…という印象はありました。言葉だけでの説明が多いので、イメージしづらい人もいるかもしれません。 自分の研究には命をかける価値はない ばっさりと言っていますが、 P6 実利の小さい学問の存在理由は、人類の知的好奇心である。 と語り、「知りたい」「理解したい」という単純な欲求でずっと鳥類学者を続けてきた川上さん。 研究者にもいろいろあるし、子どものころから興味があったわけではないのだそう。 ただ、その研究コースに所属することになって、謎を解明することが仕事になったようですね。実に正直。あまり言いたくないような失敗・研究秘話も多く登場します。 高尚な理由を持って研究に励んでいる人もいますし、たまたまその職業になった人もいる。それでも鳥を研究し、 生物相を解明する という目標に向かって進んでいます。 美しいだけの自然なんてない    無人島にて調査活動を行うこともある鳥類学者。 そこでは、外来生物を絶対に持ち込まないよう綿密に準備を重ね、原生状態の生態系を壊さぬように細心の配慮をしています。出発の1週間前から種子のある果実を食べることを禁止されるということを初めて知りました。 たしかに、たった1つでも持ち込んでしまえば、その種が瞬く間に広がり、別の生物を生かしたり殺したりできてしまう。 ヒトが介入することで、”自然”は容易に変化してしまう ことを教えてくれます。 また、 P58 原生の自然が美しいなんていうのは、都会派の妄想に過ぎない。 と言い、現実には死体にまみれ、ハエにあふれ、呼吸をするのだって