死ぬより老いるのが心配だ
著者の今までとこれからを想うエッセイ ESSAYS AFTER EIGHTY~80歳を過ぎた著者が語る彼の人生についてのお話です。 ”死ぬより老いるのが心配だ(ドナルド・ホール著/田村義進訳/辰巳出版)” というタイトルでは、心配事ばかり語られているのかと思うかもしれませんが、内容はいたって明るいもの。 詩を書くことを仕事としてきた彼の紡ぐ言葉の中に、人生との向き合い方のヒントが見つかると思います。 こんな人におすすめ 死生観について考えている人 老いることについて不安がある人 散文の詩が好きな人 概要 今回は、エッセイの中から私が素敵だなと感じた言葉を引用していきたいと思います。 イチオシの言葉たち P18 老人は永遠に他者だということだ。 若い人たちは、年上を敬い、おおむね大切に扱おうとします。でもその言葉の中に、 老人を上から見下ろしているような心が見え隠れする。蔑んでいるということではないのに、できる者ができない者の世話をするときに生まれる上下関係のようなものがそこにはあります。 著者はそれを悲しく思っているわけではありません。 自分が老いたということを忘れていて、ふとそれに気付かされるということ。「ああ、そういえば、自分も年を取ったんだ。」と。 こんなふうに素直に受け取りたいと自分も思いましたね。世話をする側もされる側もとても穏やかでいられるのではないでしょうか。 P30 矛盾は生命体の細胞が本来的に備えているものだ。 詩人として、何度も推敲を重ねる。何十回も書いて、ふとドンピシャを思いつく。 そんな執筆活動をしていたという著者。うまくいったりいかなかったりする。たくさんの矛盾に囲まれている。 そのことが苦しくなるときもあると思いますが、それが生命体であると思えば少し気が楽です。 P48 だが、この世にハッピーエンドというものはない。幸せだと思うのは、幸せが終わっていないからだ。 終わるときハッピーであることはおそらくないでしょう。 自分も、周囲の人も、きっと悲しいです。それは覚悟が必要だなと思いました。 それと同時に、幸せだ、と思うことをいつも大事にしていたいと思わせてくれます。楽しいこと、嬉しいこと、感動したことを忘れない。自分が幸せであるよう人生を自分でつくる。 いつでも、今できること・今手にあるものを丁寧に見つめていた...