男子劣化社会

 発達したITが男たちをダメにさせる?

今日ご紹介するのは、以前SNSで紹介したときに反響の大きかった1冊です。

”男子劣化社会(フィリップ・ジンバルドー/ニキータ・クーロン著 晶文社)という本です。

なぜか安全な場所にひきこもることを選んでいる男たちが増えている。
その理由を分析したのがこちらの本になります。著者はアメリカの方なので、アメリカで起きていること・アメリカの背景をベースに書かれていますが、日本にも同じように通じる部分があるはずです。

こんな人におすすめ

  • 自分に自信が持てない男性の方
  • 親として男の子を育てることに悩んでいる方

本の概要         

文章の構成

邦題は「男子劣化社会」ですが、英語原文でのタイトルは『Man Disconnected: How technology has sabotaged what it means to be male』(イギリス版)『Man, Interrupted: Why Young Men are Struggling & What We Can Do About It』(アメリカ版)となります。

日本語訳されたこちらの本。
男子を劣化させる原因と、その対策をまとめています。

序盤を読むだけでも、原因についてはチェックすることができるでしょう。様々な例を提示し、主となる意見・調査結果を補強させるようにして、繰り返し論を述べていくスタイルの文章です。人によっては、ややくどく感じてしまう人ももしかしたらいるかもしれません。

登場するご家庭・男子の例はアメリカの方々です。
日本にも共通するところはあるので、興味深く読むことができると思います。


ひきこもる男たち

「変化し続ける不確かな世の中で多くの困難に直面し、多くの若い男たちが安全な場所(家の中・親の家)にひきこもることを選んでいるらしい。

家の中では拒絶されることがないうえに、自分の能力を肯定してもらえるのだ。」

こんな状況になってしまう一連の流れをまず言うと、

ゲームの刺激→学校はつまらない→成績が下がる・ADHDだと言われる→薬物療法をされる→諸問題を引き起こす→悪循環に陥る…

上記のようになります。


さらに、ひきこもった男たちはハードコア・ポルノに依存するとのこと。
現実ではコミュニケーションをとり、駆け引きをしてそこに至るわけですが、それらをすっ飛ばして快楽を満たせるポルノは、男子たちに悪影響を与えているのです。


いつの間にやら若い世代・特に30歳未満のカテゴリーでは、学力も経済力も女子が男子を上回りつつある。
女子は男子よりも生徒会の活動や部活動、学業にいそしみ、芸術の分野でも高い能力を発揮していて、称賛されることが多くなった。
すべての対人関係は「交渉」することなのに、それを苦手とする男子たちが増えてしまったようです。


何が男たちに苦しみをもたらすか

  • シャイすぎ
  • ゲームのしすぎ
  • 太りすぎ
  • ポルノの見過ぎ
  • 薬物に頼りすぎ

これらについてもう少し詳しくみていきましょう。

デジタルな人とのかかわりがますます増えた。そのため新しい友人をするときも恋愛をするときも、相手の表情やしぐさを読み取ろうとする必要がありません。
また、友だちといるほうが楽で、女性と心の交流を持とうと考えることすらない男子たちもいる。女性と面と向かって話をする機会がないのです。


そして、ゲームの中では宇宙を制覇できます。
自分の承認欲求も満たされる。ますますのめりこんで睡眠時間が少なくなり、不眠症になっていく。


人付き合いも性的能力も減ってしまったとなると、男子は肥満になりやすくなります。さらに時間を忘れてポルノに熱中し、プロクラスターベイション(procrastinate+masturbation;ポルノのせいで何かを先延ばしにする現象)という造語すら生まれるほどになっています。


そんな症状を病気のせいにし、薬を飲めば改善できると考えてしまう。
単なる不眠症・超肥満がADHDからもたらされているのだと判断してしまう。


なぜこんな状況になってしまったのでしょうか?
もっと根本的な原因について、様々な考えが著書の中では示されていました。
いくつかピックアップしてみましょう。

父親不在

母子家庭の家では、男性のモデルとなる人がいません。
男女関係における信頼の築き方を教えてくれる手本がいないのです。


また、母親は子どもが小さいうちに失敗を経験させようとできなくなる。何しろ自分が失敗しているからでしょう。


周囲に関わる大人が少なく、自尊心や誇りを育ててくれる人物が不足すると、子どもは人生を信じることができなくなってしまうのだと著者は言います。

学校の問題

機械的な暗記ばかりさせ、想像力を養うことをおろそかにする。
休み時間は減らし、体育で激しい運動をさせずに説明ばかりする。
そのくせ授業ではそわそわせずにじっとしていろと強いる。


男子たちを動けなくさせているのは、学校かもしれません。
動くときに思いきり動き、人と関わること・相手の気持ちを想像することを教えないのでは、人生の歩き方などわかるはずがありませんよね。


また、学校での性教育が正しく行われていないことも問題であると言います。
誰も教えてくれないから、ポルノを見る。女の人をモノとみなす行為なんだと勘違いさせたり、現実とバーチャルの違いにひどく落胆させられたりする。ますますポルノやゲームの世界に逃げていき、人と付き合わず、肉体は衰えて、食生活も悪くなる。暴力的なゲームと現実の境がわからなくなる…

犯罪の温床となっている可能性もあるかもしれません。

女性の隆盛

女性の所得は伸びました。権利も認められるようになって、男性との差がないところまできているそうです。議員の男女比が改善されていないなど、いくつかは問題点もあるかもしれませんが、確実に女性は社会で認められるようになりました。
女性運動が活発になったタイミングでITは急激に進歩し、男性の役割を侵食して肩身がせまくなってきたところに、ゲームやオンラインポルノが身近に出現しました。


女性だってゲームはするし、肥満にもなるし、SNSなんて男子以上に取り組みます。それでも、女性は元来社会的な生き物です。察する力は自然と養われているので、うまく生きることができる。


いつも女性側が損をするかのように語られることが多いですが、別の視点からみれば男性だって損をしています。
男性だってレイプされることがあるし、DVされることもある。女性よりも間違いなく危険な仕事を任されることが多いのに、それで当たり前かのような風潮がある。女性は守られて当然で、男性は常に守る側なのか…?

実に興味深いですね。

このほかにも、男子・男性にひきこもらせる要因が紹介されているので、ぜひ本書でチェックしてほしいなと思います。



解決するための道しるべ

政府ができること、学校ができること、両親にできること、女性にできること、メディアにできること、そして男たち自身にできること。
そのヒントが紹介されていました。


もっと父親の役割を支援することや、性教育を整えること、栄養を考えた食事を摂らせることも必要になるでしょう。生きていくことがどういうことか、そして生きていると出会う様々なイベントに対し、どう対処していくかを教えることも大切になります。


責任感を持ち、達成感のある人生にするために、もっとティーンの男子たちと話をすることが必要だとも語られています。
タブーかもしれない話題でも、楽に話せる信頼できる人物を作る。正直に話せる関係を作っていく。


テクノロジーが日々進歩する時代。いかに共存して、自律して生きていくことができるか。それを問われているのかもしれません。



感想           

なんて失礼なタイトルなんだ…と思ったのが最初の感想です。これがもし「女性劣化社会」とか書いてしまっていたら、ものすごい批判にあっていたのではないでしょうか。


ただ、タイトルにインパクトがあってこの本を購入したのは確かです。何が書いてあるんだろうと思わせます。


侮辱的な言い回しでも、相手が男性であるとなぜか許されるような気がする。
その感覚があること自体、男性に対して「困難を受けて立ってほしい」というような考えを持っていることの証明かもしれません。


この本によると、男子たちが抱える悩みの原因は、育てる側の問題がほとんどなのかなと思います。
それを「自分たちで乗り越えろ」「男たちらしくしろ」では、ちょっと悲しい気もする。


テクノロジーが進歩して、もっと便利に、もっと楽に、もっと多様に…と変化してきました。男子が弱くなっていく状況を改善するためのベストな答えはまだないと思います。
とにかく今いいと思えること・今の時点でできることを、政府もメディアも男女もやっていくしかないのでしょうね。


男だから・女だからではなく、お互いの長所や短所をわかって役割分担をして、お互いへの尊敬や感謝を持って協同して生きていくことができればいいな…と思いました。


まとめ          

  • 男子たちはポルノのスイッチをオフしよう
  • 時間泥棒しているものはやめてみよう
  • 社会にもっと関心を持てるように支え合おう


LGBTQの考え方も広まっているので、男子と女子という2つには分けられない時代ではありますが、面と向かってのつながりが希薄な時代であるからこそ、学びの多い本だと思います。ぜひ読んでみてくださいね。

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