クララとお日さま

 人に貢献するためにつくられたAIの一生を描く

今日は、小説のご紹介です。

ノーベル文学賞を受賞されたことのあるカズオ・イシグロさんの本。”クララとお日さま(カズオ・イシグロ著/土屋政雄訳)”という作品です。

文章がすごく綺麗で、丁寧です。

内容は量も厚みもある一冊になっています。

※小説紹介はネタバレをなかなか避けられないと思います。できるだけ省いていますが、ご一読いただいてから再度この記事をお読みになるほうがちょうど良いかもしれません。

こんな人におすすめ

  • カズオ・イシグロ作品が好きな方
  • AIを題材にした小説に興味がある方



本の概要         

世界観

クララというAF(Artificial Friend)が語り手となり、物語は進みます。

とても観察力・学習能力に長けているAIであるクララ。AIを販売するお店のショーケースの中から、外の世界を眺めていました。

そんなクララが、病弱で死を恐れながらも強く生きようとする少女ジョジーと出会い、彼女の家で暮らし始めます。

ジョジーの家族、友だち、ピアフレンドたちとのかかわりを通して、ジョジーのこと、目の前にある世界のことを学んでいったクララは、ジョジーのためにできることを自分で考えて行動していきます。



各部のまとめ

第一部:ジョジーとクララの出会い

お店から外の世界を眺めているだけだったクララが、クララを必要とする人と暮らす世界へと足を踏み入れます。


第二部:ジョジーの家族

一緒に暮らすようになったことで、ジョジーの母親クリシー、友人リック、家政婦メラニアについて知ることになります。


第三部:よそよそしくなる関係

ジョジーの病気の悪化から、ジョジーの大切な人たちの姿が浮き彫りとなってきます。

母親の苦しみ、リックの決意、家政婦メラニアの気持ちなど…それぞれの登場人物たちの背景がはっきりとするのが第三部です。


第四部:クリシーの目的

なぜジョジーの母親はクララを購入し、ジョジーと暮らさせることにしたのか?その驚きの理由がここで明かされることとなります。


第五部:ジョジーの容体悪化

具合がより悪くなっていくジョジー。クララは彼女のため、病気を回復させるためにベストだと自分で判断した行動をとります。


第六部:それからの暮らし

ジョジーは生き続けることができたのか?AIクララはどうなったのか?その後のお話がここで明かされます。


感想           

ここが素敵だった!というところを紹介しますね。

①表紙が好きすぎる

見た瞬間、「かわいい!」「読みたい!」となってしまうくらい、美しい表紙です。クララとお日さまの姿を鮮やかな色で表現してくれています。


②背景情報・世界の構造がわかるまで少し時間がかかる

序盤、いきなり当然のようにAFという存在が登場。一体なんのことだ…?と登場人物たちのことがわかるまで時間がかかりました。

わかってしまえばもう大丈夫!

物語の中にどんどん引きこまれていって、健気なクララをずーっと応援してしまいました。


③穏やかに見えて実は…

AIであるクララが語り手となって、クララが見ている世界が進行していきます。

しかし第四部になると…もはやホラーになってしまうのです。ジョジーが欲しがった友だちAIクララ。そのクララを人としてとらえるか・機械としてとらえるか。そんな迷いの中で人間たちの欲望が渦巻いているのが見えてきます。


④AIや遺伝子の未来について

AIが自我を持つことをどう考えるのか?

クララの行動は優しく思いやりにあふれ、常に「ジョジーファースト」の行動をとります。役目を終えるその時まで、自分に与えられた役割を全うしようとする。

クララの姿形は人と変わりません。だからこそ、感情移入して人として見てしまう。けれど、機械なんですよね。クララの気持ちもすべてプログラムされたものなのでしょうか?AIの生をヒトとして受け入れるのか、モノとして受け入れるのか、どちらがいいのでしょうか?

物語の最後は、私にとっては悲しいと感じられるものでした。クララというAIを、私はヒトとしてとらえたいと思っているのかもしれません。

カズオ・イシグロさんの描く悲しさは、科学技術の発展に対する警鐘なのかなと思いました。


⑤クララというAIが分析する世界の美しさ

クララが見ている世界はとても美しいです。ことばがとても丁寧で、優しく、深いと感じられます。ただ、少し恐ろしくもあるのです。

カズオ・イシグロさんが「クララだったらどう表現するか?」を考えて綴った言葉たちだと思いますが、人間の行動を分析し言葉や数字に変換できるということは、”作り出すことができる”ということでもあるでしょう。

そんな未来がやってくるのか、まだわかりません。でも確実に、日々近づいています。わからない・想像のできないものはわくわくするものであり、恐ろしいものでもあると思います。

自我を持ったAIと共存する時代にヒトは人らしくいられるのか、何を考えているのか、私たちにはまだわかりません。ただ、クララが見る世界が美しいように、自然を美しいものだと感じる心が失われていないといいなと願っています。地球という惑星が、星としての一生を全うするその時まで、ヒトがともに在れたら嬉しいなと思いました。



まとめ          

  • AIの在り方について考えてみよう
  • 人とテクノロジーの共存について考えを巡らせよう
  • 心とは何なのかを自分に問うてみよう


分厚い本ではありますが、ジョジーいったいどうなるの?!クララいったいどうするの?!と続きが気になって一気に読めてしまうと思います。

ぜひ読んでみてくださいね。


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