ぼくらのアフリカに戦争がなくならないのはなぜ?
見えていない部分を目を凝らして見る
2022年2月。ウクライナを戦場としてロシアとウクライナの戦争がはじまりました。なんだか戦争が久しぶりに発生した…みたいな反応を日本は見せたけれど、紛争は実は世界各地でいつも起きていました。
このことを知るのに非常に役立つのが、”ぼくらのアフリカに戦争がなくならないのはなぜ?(小川真吾著/みつばち文庫・合同出版)”です。
目を向け続けるには辛い現実で、いかに私たち日本人は偏った情報ばかりを得ているのかがわかります。
こんな人におすすめ
- アフリカに興味がある人
- 戦争について改めて考え直してみたい人
概要
文章の構成
小学生から大人まで、幅広く理解できる平易な文章です。また、地図や実際の写真なども豊富に盛り込まれており、想像しやすいでしょう。
非常に読みやすいにもかかわらず、書かれている内容は非常にディープ。胸が苦しくなるような事実が写真とともに登場します。
上段と下段に分割され、下段では注釈やより細かい情報、人物・史実の詳細な説明が書かれています。個人的に、このように読みたい予備知識がすぐ下に書いてあるのは便利だなーと思っています。たいてい、引用などは章末や巻末などでまとめて記載されることが多いですが、いちいち行ったり来たりするのは少し面倒な気もしますね。
ヨーロッパ至上主義を知る
本の冒頭に登場する、トシャ・マギーさんの文章には、とてつもないインパクトがあります。
p4 かつて、わたしたちの村は平和でした。
この言葉から始まる日本へのメッセージでは、白人がアフリカの大地にやってきてからアフリカがどんどん変わっていったことが語られます。
- 文明のある白人は優れた存在で、アフリカの地の人々を野蛮人と呼んだ…
- そしてアフリカの人々も、自分たちが劣っていると思い、文明を学び、お金を知り、武器を手に入れ、民族が異なること・考えが異なることを攻撃の対象にし始めた。お金と武力のある者が統治する者として君臨する権利がある、と…
米国・英国・ヨーロッパの国々が自国の利益のために奴隷を使役してきた事実。
石油燃料やレアメタルを手に入れるために”和平”と称した自国に有利な合意をさせてきた事実。
火種をまかれたアフリカで、もはや紛争がとまることができなくなったという事実…。
こんな事実を突きつけられると、なんだか「先進国」って何なのか?と考えさせられますね。先に進んだのか、先に後退し始めたのか、今となっては判断ができないくらいです。
日本で生きていてできることを問い直す
今のところ、日本はゆるりと生きている国です。
四方を海に囲まれ、直接の侵攻が難しい国。
敗戦国だったけれど立ち直って裕福になった国。
先進国の仲間に入れてもらって守られた国。
そんな私たちは、他人事でいてよいのでしょうか。ただ何かを与えようと思うことは、偽善でしょうか。
この本では、本当に小さなことから始めてほしいと語られます。
- レアメタルを使うものをできるだけリサイクルすること
- そもそも必要以上に買わないこと
- 食べるものを無駄にしないで分け合うこと
- 自分でできることはやること
- アフリカに関心を向けること
- 戦争がある、と忘れないこと
- 環境に目を向けること
- 自分の預けているお金が何に使われているのかをきちんと知り、そのうえで選択すること
こんなことでいいのか…?と思うようなことかもしれません。しかし、苦しんでいる人たちへ何かを一瞬だけ施すような取り組みよりももっと重要で、今だけでなく未来にも目を向けた取り組みになるはずですね。
感想
文明は常に戦い・争い・競う中で発展してきた側面もあります。だからこそ、すべてを悪にはできないかもしれない。
私たちは、常にほかの動物や植物の命を奪って生きています。そのうえで、同種族でも奪い合います。…なんだか、心暖かいふりをしたおぞましいもののようにも感じられます。
奪うことでなく、高め合うことができたら…どんなに素敵でしょうか。知能を得た”ヒト”はずっとその道を探しているのかもしれません。
争うのは、ルールの上に立って、スポーツのように行われてくれたらいいなと思います。
戦争について考えるとき、今はウクライナのことを考えるでしょう。でもアフリカでも、アジアでも、各地で誰かが誰かの命を奪っています。その事実をどうか忘れないようにしていきましょう。
どの国のことも、できるだけ偏った目で見ないようにしたい。そしてできることをしたい。その気持ちを強くさせてくれる本でした。
まとめ
- アフリカは文明を与えられてから戦いの道へ
- 争うことから脱却する道を模索しよう
- 目を背けることなく見つめ、できることをしよう
忘れてはいけないのは、世界はずっと平和ではないということ。ぜひこの本を親子でも読み、生きること、自分たちにできることを考え直してみませんか?
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