なぜあなたは自分の「偏見」にきづけないのか~EVERY DAY BIAS~

 みんな自分を「良い人間」だと思っている

バイアスという言葉をよく聞くようになりました。要は、決めつけや偏見により、物事を正しく判断できない状況にさせるものです。

バイアスに関する本は多々ありますが、今日は昨年発売の”なぜあなたは自分の「偏見」に気づけないのか~EVERY DAY BIAS逃れられないバイアスとの共存のために~(ハワード・J・ロス/御舩由美子訳)”という本を紹介していきたいと思います。


こんな人におすすめ

  • 自分の考え方が偏っている気がする人
  • 正しいことが何なのかわからず息苦しい人



本の概要        

文章の構成

こちらの原著はアメリカなので、課題はアメリカの情勢が中心となります。その点は注意して読み進めてください。

訳は大変わかりやすく、読みやすくなっていると思います。

文量はやや多めですが、おおむね筆者の主張は1つになっています。目次を見てから内容をさらっていくこともできる内容です。


白人⇔黒人

男性⇔女性

肥満の医師⇔BMI標準の医師

など、お互いに対して思っていること、また自分自身に対して思っていることには

「決めつけ」

があると筆者は語ります。


人は第一印象を変えることがとても難しい生き物です。また、自分が黒人で相手が白人だった場合、質問されたことに対して正しく答えないケースが増え、それがさらに誤った解釈を助長させたり…日本人であっても、思い当たる節があるのではないでしょうか。

「この上司、苦手だ…」と考えていると、聞かれた質問に正しく答えなかったり、仕事への取組みもテキトーになったりしている…そんな気もしますよね。


このような例をふんだんに登場させ、偏りの証拠、そしてそれへの向き合い方のアドバイスをしてくれる本となっています。



人間である限り偏っている

みんな自分を良い人間であると思っています。私も…おそらくそうでしょう。良い人間でありたいと願っています。

でも、どうやらそうではないです。誠実でありたいと願っても、考えの偏りは存在している。


そこでどうか落ち込まないでください。

筆者のハワードさんは、

「人間である限り偏っているが、それは呼吸をするのと同じくらい正常なことだ」

と教えてくれています。



そもそもバイアスは何のために存在しているのでしょうか?

それは、めまぐるしく変化する社会に対応して、危険を予測するためにあるとされています。

良いか悪いか、正しいか間違っているか、賢いか愚かか、安全か危険か…

過去に出会ったものと比較して固定観念で仕分けをしているのです。


些細なことでも、大きなことでも、何かイベントに直面したとき、私たちの意識と無意識の中にたくわえられた記憶が呼び起こされ、ほぼ反射で即決しようとします。なぜなら、すばやく身の安全を確保したいからです。

誰かとつながっていられる・所属していられる・安全な場所。それを脅かされそうになるとき、”私たちvs私たちではない彼ら”で分ける習性が発揮されます。そして、自分の感情を正当化し、自分をよくみせ、正しいと主張する…


そう考えると、人間のふるまいは、結局のところほとんど意識にはのぼらない部分で決められていると言えるのです。


思いのほか、ロボットと変わりないじゃないか、とハワードさんは語ります。知性が高いほど理性的なわけでもない。


p98 私たちは、自分が探すものだけを見て、知るものだけを探しているのである。


自分のことほど当てにならない。改めて言われるとちょっと落ち込みます。ではどうやって生きていったらいいのでしょうか?



自分自身と対峙する

自分の知覚は信用ならない。バイアスなしには判断ができない。

それならばどうすればいいのかというと、


「対峙する」

というやり方があります。


  • 「イラっとした!」…ちょっとまて、なぜか?…自問してみたら、子どものころの○○に紐づいていたと気づいた。
  • 痩せたい!だけど食べてしまう…なぜ?食べてしまう理由を考えてみたら、心の在り方が変わった。


バイアスは人間の正常な働きである、と知っていれば、反射的に反応してしまったときも、「おや、でも待てよ…?」といったん止まって考えてみることができるはずだ、と語られています。


最近の会社でよく取り入れられている、アンガーマネジメントの考えにも繋がりますね。

自己観察の力を育てて、建設的に自分を疑ってみる。なんで居心地が悪いんだ?どうして心が詰まっているんだろう?


この”気づき”を持てるかどうか。それがバイアスと共存するためのキーになるでしょう。



よく知らない人と関われ

人はすぐに影響されます。1つの環境の中だけにいれば、それに染まるのです。そうやって適応して生きていくからです。

だからこそ、自分がよく知らない・あるいは自分が偏見を持っている集団の人と関わることをおすすめされていました。


よく知らない相手は少し怖い。だけど、知り合ってみると案外と大丈夫なことは多いです。なんだ、全然悪い人たちじゃないじゃないか。自分はまたいつの間にか、色眼鏡で見ていたのかもしれない。


その気づきが、新たな関係性を構築させるでしょう。


かかわりを増やし、多くの考え方を知り、他者からのフィードバックを受けてください。自分が思っている自分が正しいわけではないのです。



感想         

  • 自己観察の力を育てて、自分を疑ってみる。

…これができたら苦労しないんです、というのがバイアスのことを知った時の最初の感想でした。「自分を疑ってみろ」という本はたくさんあるけれど、自分の信じているものを崩すというのは、すぐにはできないなと考えています。ただ、ここが乗り越えられるかどうかが、自分にも相手にも誠実に生きていくためには必要なんだろうなと思っています。


私自身、自分のことを疑うってどうすればいいんだ?と考えてきました。

自分が「絶対これ正しいはず!」と思っていることを否定される恐怖。それを自覚しなくてはならない羞恥。悔しさ。悲しみ。


プライドが高いほど、乗り越えられない壁でした。


ここを切り替えるのに、私は3年以上使ってきたように思います。本当に少しずつ、少しずつです。素直になれてきたのは。それでも、たまに逆戻りして自分が正しいはずだ!という気持ちが炸裂しそうな日もあります。それをこらえて、考え直して、切り替えて…


私のように頑固な奴だと、バイアスを認めるのは時間がかかるかもしれません。


宗教の話をすれば、信じている神様が違う国の者同士はなかなか分かり合えません。代々受け継がれてきた信仰の気持ちを否定されることは、自分たちも、先祖たちも否定することになってしまう。そんな気持ちから、戦争がなくなることがないのかもしれませんね。


時間はかかるかもしれないけれど、あらゆるヒトの蓄積がいつか、大きな力となってくれることを願っています。


…なんだか大きなことを言う感想になってしまいました。



まとめ        

  • バイアスはあって当然のもの。
  • バイアスについて学び、自己観察してみよう。
  • 自分の知らないことに積極的に関わろう


いかがでしたか?

困ったことになる日もあるでしょう。感情ばかりがぐるぐるしてうまく考えられない日もきっとあります。そういう時は一人になって、じっくり、ゆっくり沈んで、考えてみる時間を作ってみてくださいね。

アメリカの様々なバイアスにまつわるお話、ぜひ読んでみてください。

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