「自分だけの答え」が見つかる13歳からのアート思考

 「リアル」とは何なのかを考えてみる

勉強とは国語・数学・理科・社会・英語だけをやっていればいいかというと、そうではない!と感じるようになりました。

近頃特にそう感じるのですが、むしろ、音楽・美術・体育などのほうがよっぽど生活に根差しているし、自分自身の感性を高めるのに必須であると思います。

今日は、アートとの向き合い方・アート思考とは何かを教えてくれる、”「自分だけの答え」が見つかる13歳からのアート思考(末永幸歩著/ダイヤモンド社)”という本を紹介していきたいと思います。


こんな人におすすめ

  • 芸術とは何か考えてみたい人
  • アート思考を身につけたい人


概要         

文章の構成         

筆者である末永さんが語りかけてくるような、優しい言葉遣いが印象的です。

例をふんだんに取り入れながら、

  • アートとは?
  • 作品への向き合い方は?
  • リアルとは何か?

といったトピックを解説してくれています。



美術の時間をもっと大事に    

学生のころの美術の時間はどのように過ごしていましたか?

私は、「あまり成績に影響はしてこないもの」という認識があり、リラックスしてぼやっとしている…そんな時間でした。

もちろん、美術でもテストはあったので、絵画の歴史を暗記することや絵の提出課題はちゃんと取り組んでいた…という記憶があります。


筆者は、美術の授業を

自分なりのものの見方・答えをつくる能力を育むもの

であると考えており、正解などない目まぐるしく変化する世界だからこそ、自分で探求するちからを育てることが必要だと語っています。


今でこそ、この言葉を素直に受け取ることができますが、学生当時では理解できなかったことでしょう。おとなだからこそ、美術・芸術の嗜みが人生の豊かさにつながっている気がしてなりません。



アートはタンポポに似ている  

筆者は、アートはタンポポのようだと表現しています。

花はごく一部で、その根が興味のタネ・探求の根・アート思考として広がっている。あちこちに根を広げることを楽しむのがアーティストで、花は単なる結果に過ぎない…と教えてくれます。


ずばり、アート思考とは

「常識や正解にとらわれず、自分の内側にある興味をもとに、自分のものの見方で世界をとらえ、自分なりの探求をし続けること。」

より詳しく考えてみましょう。



アートの歴史を紐解く     

【ヨーロッパ】

昔、アート・絵画というのは、写実的であれば良いという時代がありました。

教会の布教活動のための宗教画や肖像画はよりリアルに・本物のように描かれるべきとされていた。

しかし、のちにカメラが世に登場すると、画家たちはリアルに描くということの意義を見失いました。目に映るとおりに描くのではないなら、何を描いたらいいのか?そうやって画家たちが模索・探求の根を広げて思考を重ねたことで、多種多様な絵が生まれたのだと言います。


目に映る世界を徹底的に模倣することだけが優れた再現ではないかもしれない。視覚でとらえられない部分にも”リアル”というものがあるはず。見かけは元気でも裏では元気じゃない人がいるように。”見えないもの”を表現する道が模索されていくのです。


【エジプト】

古代のエジプトでは、死後の世界が信じられていました。

だからこそ、死後に備えてピラミッドがつくられ、壁画も永続性のある完全なる姿にこだわっていたのだそうです。

エジプトの壁画って、みんな横向きですよね。あれは、その人・動物の特徴すべてを明確に描くための方法だったんですね。エジプトにおける”完璧”は、あの横向きでなければ表現できなかったわけです。


ヨーロッパと同じように、完璧・リアルを求めた結果ですが、まったく別の表現にたどりついているのがわかります。


【日本】

では日本はどうでしょうか?

日本で独特なのは、「敢えての空白」ではないかとこの本では語られます。

確かに、余白、余韻を楽しむところがありますよね。掛け軸でもそう、屏風でもそう。


歴史や文化をたどると、

アートの答えは、変わっていいのだとわかります。

絵を観るとき、わたしたちはどこを見ているでしょうか?絵具やそれが貼りついたキャンバスを見ているわけではなくて、その”イメージ”を見ている、と言えるのです。



感覚を研ぎ澄まそう     

作品と向き合うとき、おとなである私たちはそのタイトルや解説文に答えを求めがちです。だからこそ、筆者は


感覚器官を駆使しして作品と向き合う


ということを勧めています。そのために

アウトプット鑑賞

という方法を紹介していました。色は?場所は?どう見える?何を感じる?…などなど、とにかく口に出してみる方法です。


感じたこと、考えたことを素直に出してみる。だって正解などないのですから。ものの見方に当たり前などなくていい。そういわれると、なんだかアートと向き合うときにハードルはぐっと下がってくれる気がしますよね。



感想         

絵がうまい人=写実的に表現できる人

であろうと私は思っていました。だってすごいですよね、目に映った世界を正確に紙に描くことができるなんて…

私はあまり絵がうまいほうではなくて、ついつい憧れてしまいます。


ただ、技巧だけがアートの評価ではない、とこの本が教えてくれました。

背景とのやりとり、作品とのやりとりはアーティストがまずつくってくれる。それを観る人がどう解釈するのか?その解釈次第で作品はいくらでも新しい世界に広がっていく。

今後アートに触れるときのワクワクは今までとまったく違ったものになるでしょう。


また、見かけと本心の考え方も素敵でした。

「見かけ上のもの」があって、「別の気持ち」も存在しているとき、別の気持ちのほうが本心と呼ばれがち。

でも本心がリアルなのかと言えばそうとも限らない。

それに、人から見たら見えているものがリアル。

実際には、心も見かけもどちらも本当なんですよね。人は裏を見てそちらを本当のことのように考えようとするけれど、やっぱり見た目も本当のもの。どちらもあってのリアルなんだろうな、と考えさせられました。



まとめ         

  • アート思考で自分の内側と向き合おう
  • 世界の見方は変化してよい
  • 探求をし続けよう


主に絵画が登場しましたが、アート・芸術の世界は広く、解釈次第では世界すべてがアートかもしれません。

自分だけの答えを探す旅を、ぜひこの本と一緒に始めてみてください。


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