LIFESPAN(ライフスパン)老いなき世界

思い込みを越えて世界を変えよう

私たちは、年齢を重ねるほどに老いていくことを当たり前だと考えていますよね。

しかし世の中には、「ヒトはなぜ老いるのか?」と考え、真剣に老化を止めようと試みる人たちがいるのです。老化のメカニズムに迫り、これからの生き方を問う本、”LIFESPAN(ライフスパン)老いなき世界(デビット・A・シンクレア/マシュー・D・ラプラント他著/東洋経済新報社)”を紹介していきます。


こんな人におすすめ

  • 老化のメカニズムについて知りたい人
  • アンチエイジングに興味がある人
  • 年代別に何をすべきか知りたい人


概要          

文章の構成          

翻訳された文章です。訳はたいへん読みやすいと思います。ただとても専門的なワードも出てきますので、生物系・医療系専門用語に苦手意識がある方は読み進めるのが大変かもしれません。文量もかなり多いです。

ただ、近年の研究の成果から、アンチエイジングし長く生きる方法を事細かに紹介してくれている本で、今できることからこれから取り組むべきことまで指針をくれます



老化のメカニズム       

老化はずばり、

DNAの損傷

であると表現されています。


たいへん専門的なワードが並びますが、

エピゲノムが変化する→染色体の末端を保護するテロメアが短くなる→タンパク質の正常な働きが失われる→代謝の変化により栄養状態の感知メカニズムがうまく調節できなくなる→ミトコンドリアの機能が衰える→老化細胞が蓄積して健康な細胞に炎症を起こす→幹細胞が使い尽くされる→・・・老化

という一連の流れがあるようです。

そもそも、老いることがなければ病気を防げるはずだし、死を先に延ばすことができるだろう。

老化=病気

と考えたほうがいい。これが筆者の意見です。



長寿遺伝子          

体内の監視し、何を食べ、どれくらい運動しているかをみてくれているのが長寿遺伝子であるとされています。

その遺伝子の中でも、より長く健康に生きるために人の手で調節できるとされているものがある。その一つが

サーチュイン遺伝子

です。


体内のほぼすべての細胞でたんぱく質を作ってくれているサーチュイン遺伝子。加齢とともにNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)が失われ、そのせいでサーチュインの働きが衰える。これが、老齢に特有の病気を発症する大きな理由の一つになっているというのです。


サーチュインに限らず、長寿遺伝子は生体にストレスがかかると始動します。

精神的な面でも適度なストレスが体に必要だ、という話はご存じの方も多いと思いますが、体に与える負荷の量も大事なのですね。

具体的には

  • 軽い運動
  • ときおり絶食
  • 低タンパク質の食事
  • 糖類を減らす
  • 高温や低温などに体をさらす

などが例として挙げられています。サウナ人気も納得です。


ただ、人間はどうしても楽をしたい生き物。これらの効果を薬一錠で疑似体験させられないか?というのが、現在の研究者たちの試みなのです。



とんでもなく長生きの生物から学ぶ

  • ヒッコリーマツ
  • ニシオンデンザメ
  • ホッキョククジラ

これらは長生きとして知られる生物です。お恥ずかしながらヒッコリーマツというものを知らなかったので画像検索しましたが、なんと9550歳のヒッコリーマツがスウェーデンに生えているらしい…!(正確にはその根。幹は600年ほど。それでもすごい。)


研究者たちは、あらゆる生物が同じ長寿遺伝子を持っていて、樹木も、酵母も、人も、クジラも、たどっていけば原初の生物の産物だ、と言います。

しかし、老化のペースが全然違う。

人はDNAが日光やX線などを浴びて損傷していくと、細胞のアイデンティティが変化してしまう。その修復が間に合わずに命が終わる。ここに抗う術を見出そうとするこの本は、それこそ禁断の書かもしれないですよね。



何を避け何を摂るか      

摂るべきもの

  • 野菜
  • 豆類
  • 全粒の穀物


避けるもの

  • 乳製品
  • 砂糖


これらは食べ物に関してです。

健康な機能を保てるくらいの食物は与えながら、食事の量や回数を減らす。

これに尽きるのだと筆者は言います。…贅沢な食事を摂りたくなくなりますね。あんなに好きだったスイーツものも、今ではなんだか食べるのが嫌になりました。

このほかにも、

タバコ、容器のプラスチックに含まれるPCB、アゾ染料、亜硝酸ナトリウムで処理した塩漬けや燻製・加熱したベーコン、紫外線、X線、ガンマ線、屋内ラドン、魚の体内にあるかもしれない化学物質…などなど。

DNAを損傷させるから避けたほうがいいものが多すぎる。すべて避けることが難しすぎる。だからこそ、研究者たちは薬に光を見出そうとしています。


現在のところ、効果があると判断されているのは以下のような薬です。

  • ラパマイシン
  • ラパログ
  • メトホルミン
  • レスベラトロール
  • NAD増強因子

本書の中では、その作用機序から副作用まで、細かく記載されています。



老いなき世界へ       

若くあるためのDNAは、歳をとってもなくなるわけではない。読み込みができなくなってしまうだけ。だからこそ、クローン技術、iPS細胞の活用をすることで細胞のリプログラミングができるのではないか?と考えられています。


また、何歳の時にこのワクチン、次はこの薬、検査…とやっていくプランはすでにでき始めている。実用化できる状況にはないけれど、どのタイミングで何をすればベストか?を研究者さんたちは探し続けています。


ただ、命が終わらないことによる弊害もおそらくある。老化を遅らせることで得られる経済効果と、長く生きることで生じると考えられる問題たち。それを天秤にかけ、命の在り方を模索していく努力も必要でしょう。

もちろん、不死ではありません。

長く生き、終え方を決める。今だけでなく、未来に責任を持つ生き方を考えていこう、という言葉が強く響きます。



感想         

私はすっかり影響を受けて、食べ物の習慣を変えてみました。でもこれが効いてくるのがおそらく数十年先になってしまうので、そのころどうなっているか…。今の積み重ねが未来にに何をもたらすか?すぐに知ることはできないので、気長に体験していきたいなと考えています。

私が実際に40歳くらいを超えたとき、サプリメントも充実しているかもしれません。それを試すのが今は少し楽しみです。

 

人は今までいろいろと生き方を変えてきました。その結果、平均寿命は延びた。それは乳幼児のうちに命を落とす人が減ったからで、全体の寿命が長くなったからです。昔は子どもが必要で、たくさん産んだけれど、今はたくさん産まなくても生きることができる子どもがほとんど。だからあまりたくさん子どもを産まなくてもいいという考え方になるのは仕方ないですよね。

ヒトの最大寿命はさほど変わっていません。それが今後どう変わってくるか?怖いようだけれど、楽しみでもあります。


老化を当然とせず、抗いつつも、終わりを見据えて生きていく。長くて良い生き方よりも、良い終わり方を考えてしまいました。



まとめ         

  • 老化は病気だと言える
  • 長寿遺伝子を活性化させよう
  • 命の在り方を考えよう


決して夢物語ではないな、と思いました。ただ、その扱い方は考えていかなくてはならない。命をどう使うか?も考えさせてくれる、そんな1冊です。




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