LOVE & SDGs 車いすでもあきらめない世界をつくる

 本の構成までバリアフリーな気がする1冊

大学4年生・22歳の時に遠位型ミオパチーと診断された織田友里子さん。それ以来、日々動かなくなっていく体と向き合い、日本・そして世界にバリアフリーを広めようと活動を続けてきました。

そんな彼女のこれまでの道のりと、福祉に対する思いをまとめた1冊。

”LOVE & SDGs 車いすでもあきらめない世界をつくる(織田友里子著/鳳書院)”を紹介していきます。


こんな人におすすめ

  • バリアフリーに興味のある方
  • 車いす生活について知りたい方
  • SDGsに興味のある方



概要          

本の構成          

1冊の本そのものがまさにバリアフリーという感じです。

織田さんが病気になり様々な活動を始めるまでの歩み。これをまとめた漫画からこの本は始まります。

そしてデンマーク留学の経験、現在取り組んでいることの紹介、日本の大臣との対談、織田さんの思いを綴った章、そしてSDGsとしての活動…と、非常に多くのトピックが盛り込まれているのに、全然飽きのこない文章になっていました。


字が大きめで読みやすく、丁寧な言葉遣いと写真豊富なつくり。誰にでも読みやすく、理解しやすい内容になっています。



織田友里子さんの歩み     

漫画の中では、まだ難病指定すらされていなかった遠位型ミオパチーになるまでの織田さんの姿が描かれています。いきなり訪れた病気。しかも治ることがないと告げられた悲しみ・恐怖…経験したことのない人にとっては理解しえないものかもしれませんが、漫画になっていることで、当時の状況がよくわかると思います。


周囲の人に支えられ、辛い毎日の中にも光を見出してきた織田さん。

彼女の活動は非常に多岐にわたります。

  • デンマーク留学:車椅子の状態になってから留学。福祉政策の最先端を学ぶ。
  • PADM発足:遠位型ミオパチーの患者会。
  • WheeLog!開発:バリアフリー情報提供をみんなで行う情報共有アプリ。Googleインパクトチャレンジでグランプリをとり開発へとこぎつける。
  • 車椅子ユーチューバー:登録者1.39万人(2022.8月現在)。
  • SDGs:世界各地のサミットへの参加。プレゼンターとしての登壇。


もはや日本を飛び出して、世界中にバリアフリーの必要性を訴える大使のような活動をしていらっしゃいます。文部科学大臣賞を受賞したり、万博に参加したり、24時間テレビに登場したり…彼女の存在を知らなかった私ですが、今後ぜひ追っていきたい一人となりました。



夫の存在          

織田さんの活動に欠かすことのできない存在の一人が、夫の洋一さんです。

彼のすごいところは、大学生の時に付き合っていた友里子さんが難病になったからといってゆるがなかったところ…だけでなく、妻を理解し、受け入れて、支えているところだと思います。

まさに、「病めるときも、健やかなるときも、妻を愛し、支えること」を誓っている感じです。「かわいそう」と捉えることなく、「誰だって見えないところでたくさんの人に支えられて生きているんだから」と言い切れる人。当たり前のようにいてくれる洋一さんの存在に助けられて、友里子さんの人生はあります。


洋一さんが多くを語っているシーンはこの本の中にはないです。実際には多くの葛藤があるのだろうと想像しますが、プライベートもオフィシャルも支えるベストパートナーと言えるでしょう。尊敬です。



世界の福祉         

デンマーク

デンマークでは、高い税金で国が福祉を支えています。国民が「生まれてから死ぬまで何の心配もない」と誇りにさえ思う国…素敵ですね。

日本では人気のない介護の仕事も、デンマークではむしろ人気の職業の1つのようです。労働環境法で「30キログラム以上のものを抱えてはいけない」と決められている…と書かれていて驚きました。必要な分だけテクノロジーを導入し、無理なく働く。無理をしようとする日本とは大違いですね。


また、「子どもには子どもの、親には親の人生がある」と考える国民性が素晴らしいと思いました。18歳になったら親子は別々に暮らす習慣があるとのこと。年齢と共に親が介護を必要とするようになれば、施設入所を気軽に選択できるのです。


日本では、「家族としての責任を持つ」という考え方があります。それもまた間違ってはいないと思いますし、やり方次第だろうとは思うのですが、デンマークから学べることは多そうです。

もちろん、デンマークだって完璧な国ではないのですから、お互いのことをもっと学んでいきたいものですね。



UAE

UAEでは、障がい者のことをpeople of determination:挑戦者と呼ぶそうです。かっこいいですね。普通よりおそらく困難が多いからこそ、”挑戦者”。生きることを後押ししてくれる、素敵な呼び名だと思いました。

そんなUAEの地でサミットに参加する織田さん。英語でのスピーチをしたり、大臣たちとコミュニケーションをとったり…立派な日本の大使です。



印象深い言葉         

自分が目指すものに向かって命を削る。後悔がないように生ききる。

日々動けなくなっていく体でも、テクノロジーの力を借りて、どうにかできないかと試行錯誤する。自分のやりたい目標に向かって歩む姿は、美しさと強さを感じさせます。


世界はつながっている

遺伝子のうえでもそうだし、空間でも、私たちはつながっている。今でこそ感染症の流行で直接会えないこともありますが、インターネットのおかげで繋がりは続いています。会えないからこそ、繋がっているんだと強く感じられるようになったとも言えるでしょう。

言葉は違っても、生きる場所が違っても、世界はつながっている。悩むことも、同じ人として似ている。そんなことを考えました。


縁する人を愛して生きていく

「出会う人」ではなく、「縁する人」と表現しているのがインパクトがありました。出会い、関わり、交流が深まっていく様子がよく伝わる言葉であるように感じます。



まとめ         

  • 車いすでも世界を渡り歩く女性活動家がいる
  • やりたいと思ったことに一生懸命になろう
  • 縁する人を大切にしよう

障がいがあることを個性とし、それが当たり前にある世界を目指していきたいですね。


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