もうろく帖
自分自身が耄碌していく記録
時々、というか割といつも考えていることがあります。
いつ、どのように自分が死ぬか?ということです。
そして、その時を選択することがおそらくできないであろうことを考え、どういう「終活」をしておくか、考えるときがあります。
そんなとき、今日ご紹介する本、”もうろく帖(鶴見俊輔著/編集グループSURE)”という本がお供になってくれるのではないでしょうか。
寂しいような、悲しいような気持ちになるかもしれませんが、割と晴れ晴れとした気持ちも与えてくれるのです。
こんな人におすすめ
- 終わりゆく命について考えてみたい人
- 老いることについて考えてみたい人
概要
文章の構成
こちらの本は、著者である鶴見俊輔さんが69歳を過ぎたときに始めた記録です。自分自身の耄碌(もうろく)に気づいて書き溜めることを始めた「覚え書きのまとめ」となります。
- 新聞や様々な著作を読み、印象に残った言葉たちを日付と共にメモしていく。
- そして時々、自分の中に湧き上がってきた言葉・考えを書き込んで、残していく。
決して長くはない、詩のようなメモ。
それは時に日本語、英語、漢文…と、様々な形をしています。
一度さらっと目を通しただけでは訳が分からない気もするのですが、二度三度とその言葉を読んでいると、なんだかじんわりと自分の中に染み渡ってくるものを感じることができます。
心に響くフレーズを見つけよう
ほとんどが1ページに1つのメモとなっていて、読み切るのはあっさりだと思います。
1つ1つ、なぜそれをメモしたのだろうか?
何が印象深く残っていたのだろうか?
想像しながら読み進める楽しさがあります。
そして、時々鶴見さん自身が書いている言葉が登場しますが、それがまた心強い。優しい気持ち、穏やかな気持ち、前向きな気持ちを感じ取ることができます。
…今はこの言葉がずっしり来たけど、来年にはまた違うかもしれない。
読む時々の自分の状況によって受ける印象が変化する楽しみがあるのではないでしょうか。
2022年9月現在はこの言葉!
P40 今ここにいる。ほかに何をのぞもうか。
自分の人生に高望みをしたり、あるいは低すぎる評価をしたり、苦しい気持ちはいつでも生まれてくる。そういうときは、この言葉を思い出したいと思いました。
P43 よぼよぼのじいさんと自分をみる。ーーみずからをよぼよぼと見さだめることのむずかしさ、それには日々の努力がいる。
生まれたらあとは老いていくのが地球の生物です。種により長さに違いはあっても、時間を経て変化せざるを得ない。その中で、自分を老いたと考えることなく、いつまでも若々しく…と思うけれど、何かが弱くなっていく恐怖や悔しさと向き合うときがきっと来る。自分を許して笑うことができるかどうか…時々不安になってしまう。受け入れることにも、努力が必要なのかもしれません。
P59 夢をみる時間をあたえられたことに感謝する。
このフレーズを見たとき、FF10のティーダを思い出したのですが…わかってくれる人がいらっしゃったら嬉しいです。私たちは過去の人たちがいたからこそ生まれた存在。過去の人が願ったモノの結晶。そう考えると、祈り子の夢ってかなり的を得ている気がします。
同時に、いつの時代・どこの国でも、夢をみることすら叶わなかった人たちがいることを想い、自分の幸福にも気づかされます。
P99 …ぼけのステージごとに演技をつづけたい。
私たちの人生にはきっとステージがあります。そして、その舞台の上で役を演じ切る。これから様々な病気を経験するのであろうと思うと怖さもありますが、悲観するよりも受け入れる。そんな強さを身につけたいと思わせてくれました。
感想
上記に紹介したメモ書きのほかにも、「これは確かにその通り!」と思えるものや、「あーわかるなーこの気持ち」と感じた言葉、「これはちょっとまだわからない」と思ったものまで、様々なメッセージが書かれていました。
どのメモ書きも、短い言葉の中に作者の心と時代背景があることを感じさせます。
全体を通して、あまり死への恐れは感じさせません。
平凡である日々。間違いがあって当然の世界。誰かが生まれる。誰かが亡くなる。自分がその中で静かに佇んでいる。
時の流れがゆっくりになるような印象を与え、なんだか優しい気持ちになりました。
著者が語る静けさはきっと心地良い気がする。いずれ来るその時に、同じように自分や世界を見つめてみたい、と思います。
まとめ
- 年齢を重ねることと向き合ってみよう
- 著作を書く人の生涯に想いを馳せよう
人により受ける印象は異なると思いますので、ぜひ一度手に取って、感じてみてくださいね。
後編もありますので、そちらもチェックしてみてください。
※「もうろく帖」のシリーズは、書店での取り扱いがなく、楽天ブックスやAmazonでは取り扱いがありません。購入できるサイトのURLを載せておきます。
★恵文社一乗寺店オンラインショップ
https://www.keibunsha-books.com/
※現在「もうろく帖」、「もうろく帖 後編」の取り扱いがありますが、品切れの時があります。入荷まで待つこともありますのでご了承ください。
発行・販売元で直接購入する方法もあります。詳しくはサイトをご覧ください。
★編集グループSURE
https://www.groupsure.net/post_item.php?type=books&p=1&o=&y=&page=tsurumi_mourokuchou
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