ケーキの切れない非行少年たち

犯罪の背景にある要因は何か?

大変悲しく重いテーマとなりますが、子どもに関わるのであれば読んでおくべきであろう1冊をご紹介したいと思います。

”ケーキの切れない非行少年たち(宮口幸治著/新潮社)”は、児童精神科医である著者が出会った非行少年たちのお話です。少年院にやってくる非行少年たちの背景にある問題についてまとめ、さらにその解決策も提案してくれています。

漫画化もされ、さらに続編も登場しているこのシリーズ。かなりショッキングな事実が語られていますが、この本に登場するような子どもたちを救い支えられるようになることが、彼ら自身だけでなく社会のためにきっとなるはずです。


こんな人におすすめ

  • 非行少年たちの気持ちを考えてみたい人
  • 身近な子どもの教育に役立てたい人



概要          

文章の構成          

精神科医である著者・宮口さんの易しい口語です。文量も多すぎず、読みやすい内容であると思います。


本の主旨・結論を言ってしまうと以下の通り↓

  • 非行少年たちの中には認知機能・知能の低下した子どもたちがいる。
  • そのため反省することすら難しい場合がある。
  • 見る・聞く・想像する力が弱いことで、小さなころからイジメに遭っていたケースが多く、それが非行につながる。
  • 困っている子どもの早期発見と支援をすることが必要。


このような内容です。実際に非行少年たちに接したことがあるからこそ紡がれる切実な問題提起。胸が痛くなる内容ですが、小さなころにSOSを発している…というケースはごく身近にもきっとあるはずです。

目をそらさず、読み進めていきましょう。



非行少年たちの背景      

自分のしてしまったことを振り返り、何がどう間違っていて、次はどうすべきかを考えてみる…そんな認知行動療法の手法は、認知機能に問題がないことを前提として考えられている治療法です。

さらに、そんな治療に辿り着くことができる子どもたちは、そもそも比較的恵まれている。病院に連れてきてもらえるくらい親が理解があり、金銭的余裕があるということを意味します。


子どもたちの中には、

  • 見るちから
  • 聞くちから
  • 見えないものを想像するちから

が弱いことで、勉強が苦手・話を聞き間違える・内省できない・感情をうまくコントロールできない…などの症状を持つ子たちが少なからず存在しているのだそうです。


そして彼らは、幼いころからイジメに遭い、自分に自信が持てず、成功体験を得られないまま他人や自分自身を傷つけてしまう。

人は他人とのコミュニケーションを繰り返し行っていくことで、相手の反応に応じたフィードバックを行い、自分自身の姿を認識していくものなのに、その経験が少ないまま成長し、非行に辿り着く…

なかなか直視したくない話ではありますが、周囲を振り返ってみると、確かに同じような特徴を持つ子どもは身近にいたかもしれません。



気付かれず忘れられてしまう人々

IQは85未満となると相当なしんどさを感じている可能性があるそうです。

しかし彼らは困っていても自分から支援を求めることはなかなかない。だって彼らにとってはそれが普通で、区別がつかないからです。


見た目には普通な人。だからこそ彼らにとってすれば能力に見合っていない仕事を与えられ、失敗し、叱責され、自信をなくし、仕事を辞めて、イライラして、誰かを傷つけて…なんていう悪循環を作り出してしまう。


こんな状況になる前に、小さな子どものうちにどれだけ気づいてあげることができるか?どれだけ社会で生きていくスキルを支援することができるか?が大切であると著者は語ります。



非行少年にさせないためのコグトレ

子どもたちの問題を解決するためには、「教育」を変革させる必要があります。

ただ褒めればいいわけではない。傾聴すればいいわけでもない。

  • ありのままの現実の自分を受け入れていく強さ
  • 社会性のスキル(対人スキル・感情コントロール・問題解決力)
  • 自分で気づくちから

これらを高めてあげる必要があるのです。


そのために、著者が提案しているのは「コグトレ」というトレーニングです。

認知機能強化トレーニングであるコグトレは、認知機能を構成する5つの要素(記憶、言語理解、注意、知覚、推論・判断)を鍛えるワークシートです。

考えるちからを子どもの心を傷つけることなく育てることができ、学校の1日5分の時間で実践できる。

単純に、素晴らしい取り組みだと思いました。

学校の教育現場にぜひ取り入れられてほしいですね。これこそ、道徳や総合的な学習として必要なことなのではないかと思います。



感想          

私はまず漫画のほうから読んでみたのですが。絵もあるとより一層リアルさが増しますね。漫画のほうは”「子供を殺してください」という親たち”の作者でもある鈴木マサカズさんの絵で、怖さや哀愁が強く感じられます。


自分がなぜ今のような考え方をするのか?

考えてみると、子どものときの影響は計り知れないものがある、と気づかされます。

教育方針、親がどういうことを教えたか、学校環境はどうだったか、先生はどんな人に会ったか…

そう考えると、子育てがいかに難しく、責任の大きいものなのかを痛感させられます。より良くしようとすればするほど、ますます重い感じがする。


子どもの周りに存在する大人が責任を持つことが必要ですが、親だけの問題にせずに、社会で育てるという意識が大切なのだろうと思いました。

親だけで背負いきれるものではないのに、核家族になって、少ない大人だけで子どもを支えるのはきっと大変ですよね。何か認知機能のゆがみがあればなおさらです。

複数の世帯で一緒に暮らすメリットは、こんなところにもあったのかもしれませんね。



まとめ         

  • 非行少年たちの背景に目を向けよう
  • 認知機能を鍛える楽しい学びもある
  • 社会全体で子どもを支えよう

少しでも非行少年たちが減るように、願ってやみません。


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