アルケミスト

 大いなるものに導かれる夢探求の物語

何も持たない羊飼いが見つける夢とその先の物語。

”アルケミスト(パウロ・コエーリョ著)”をご存じでしょうか。

1988年に刊行された後、最初に日本語訳されたのは1994年のことでした。日本でも名著として語り継がれ、2001年には愛蔵版として画を追加したものが再出版されていました(平尾香 画/山川紘矢・山川亜希子 訳)

今日は愛蔵版のバージョンで紹介していきたいと思います。印象的な線と色合いで描かれた挿絵は砂の国を旅する主人公サンチャゴ・そして登場人物たちにぴったりです。


こんな人におすすめ

  • 夢を叶えたいと思う人
  • 人生の歩き方を見直してみたい人
  • 自分の運命を信じてみたい人



概要          

簡単なあらすじ        

”主人公の名はサンチャゴという男の子。彼は、両親が望んだように神父になるための神学校に16歳まで通っていた。しかし、小さなころから彼には夢があった。それはもっと広い世界を知りたいということ・旅をしてみたいという夢だった。

勇気を振り絞って父親に「神父になりたくない」と告げ、旅をする羊飼いになることを決めたサンチャゴ。故郷の外アンダルシアの平原を自分の足で歩き、様々な人やモノを見聞きしていく中で、ある不思議な夢を2回見るのだった。それは、自分がエジプトのピラミッドに連れていかれるというもの。

彼は、その意味を知るため、タリファにいる夢を解釈してくれる老女のもとを訪れる。そこから、彼の運命の旅が始まった…”



夢を叶えるため前兆を逃さずつかもう

心から欲しいと願うものはありますか?

人それぞれ、大なり小なり願いがあると思います。サンチャゴにとってはそれは旅をすることでした。

羊飼いとなって「旅をする」という願いが叶えられた後、彼はなんだか小さくおさまろうとします。気の合う少女とも出会い、結婚も意識することに。

しかしそんなとき、エジプトのピラミッドに導かれる夢を見るのです。

これが彼にとってのターニングポイントとなりました。


この後も、サンチャゴの旅の中では多くの「前兆」が登場します。

困ったとき、何気なく過ごしているとき…それはふと現れて、夢を叶える後押しをしてくれるのです。もちろん、必ずしも良い知らせだけではありません。苦しく恐ろしいことも含まれています。それでも、それが夢を叶える道しるべとなっていることは確信できてしまう。サンチャゴは心が揺れながらも導かれるままにピラミッドを目指します。


一見、スピリチュアルな世界・ファンタジーの世界の話であるように思われますが、似たような経験をした方もいらっしゃるのではないでしょうか。

  • 「よし、○○を達成するぞ!」と決意できた後に、それに必要な情報が目や耳に飛び込んできやすくなる。
  • なんだか都合の良いことが重なってうまくいく。
  • 自分が心に決めた道を後押しされているように感じられる。


これらは、「自分・脳が集中して意識を向ける先が変化したことによるものだ」と言えばそれはそうだと思います。それでも、世界が本当にやりたいことを後押ししてくれるようにできていると考えることに、ちょっとロマンがあります。



立ちはだかる困難は気づきのチャンス

サンチャゴの旅はいつもハッピーなわけではありません。道しるべは辛い困難として現れることがあり、幸せな気持ちと辛い気持ちは交互に行ったり来たりしながら繰り返されます。


時にはお金を奪う犯罪者として、

またある時にはやり直しの時間を与えてくれる商人として。


ここでサンチャゴの素敵なところは、

常に素直に前兆を受け取り、自分の中で気づきを得ていること

だと思います。

P49 一人の人間が僕を裏切ったから、僕はいじわるになり、人を信用しなくなるんだ。

P50 なぜ気がつかなかったかというと、それにあまりにも慣れてしまっていたからだった。

P82 決心するということは、単に始まりにすぎないということだった。

サンチャゴが問題にぶつかるたび、自分の頭で考え、気づきを得て、進んでいく姿が眩しいくらいに素敵です。


私は本が大好きだけれど、作中でサンチャゴが言っているように、

P91 本を開けるたびに何か大切なことを学べるという迷信を持っていた

ということが痛いほどわかります。学びは大切だし、自分の枠を広げてくれるけれど、自分を深くするのは常に自分自身の思考次第。自分の頭で考え、自分の足で歩く大切さを教えてくれていると思います。



夢を叶えるための4つのハードルを乗り越える

著者であるパウロ・コエーリョさんは、愛蔵版の刊行に寄せてメッセージを残してくれています。その中では、自分の夢に立ち向かうことができなくなる4つのハードルについて語ってくれていました。(作品の冒頭に掲載されています)

1:幼いときから不可能だと言い聞かせられることによる思い込み

2:やりたいことを追い求めると周囲の人が傷つくと思う思い込み

3:途中で挫折したらどうしようという恐怖感

4:夢が叶うほんの少し手前で自分で自分の夢を壊そうとしてしまうこと


人生には挫折が必ず訪れる。それは当たり前のことなのですが、辛さからは逃げたくなりますよね。

経験が足りなければたくさんの失敗をしてしまうのが人間なのだ

さんざん苦労したらあとは報われて当然だ

と開き直ること。

紆余曲折を泣いたり笑ったり豊かに受け止め闘っていくこと。


これらを忘れずに、自分の速度で進んでまいりましょう。



感想          

初めてこの本を知ったのは英語版を読んだときでした。改めて日本語訳で読み直してみると、これまた面白い作品だなとしみじみ。

夢を追うこと、巡る旅はもちろん面白いですが、自分が経験したものをすべて持って回帰するに至ったときに、「幸せの青い鳥」と同じような結論に辿り着いているのが興味深かったです。


『答えは自分の中にある』

というセリフが様々な作品の中に登場しますが、まさにその通りですね。目の前にある自然やいつもと同じ出来事も、心が変わった状態で見つめるとまったく違うものに見えてくる。答えはいつも、自分が導き出すものなのだと思いました。



まとめ         

  • 羊飼いサンチャゴのスペイン~エジプトへの旅路
  • 大いなる魂に導かれる冒険譚
  • 夢を叶える勇気を持とう

神様の導く運命…というワードや描写が宗教色が強い作品であるように感じられる可能性もあります。苦手意識のある方もいらっしゃると思いますが、夢を応援する本としてお読みいただけると良いのではないでしょうか。

※今回は楽天での取り扱いがありませんでしたので、リンクはAmazonのみとさせていただいております。予めご了承ください。

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