新版 ハマトンの知的生活

 知力・精神力を高めるための日々の過ごし方

6月も終わりが近づき、2023年も折り返しとなりました。皆さんの今年の目標の進捗状況はいかがでしょうか?

今日ご紹介するのは、”新版 ハマトンの知的生活(P.G.ハマトン著/渡部昇一・下谷和幸 訳/三笠書房)”という1冊。

こちらの原著は1873年にThe Intellectual Lifeというタイトルでマクミラン社という会社から出版され、以降絶えず版を重ねてきたという本です。大学に通わず、フランスに定住しながら当時イギリスの代表的な学者・芸術家・作家・詩人に尊敬されたというハマトンさん。彼が織りなす知的生活の心得は、多くの人間に影響を与えてきました。

明治以降、日本の旧制高校や大学の英語教科書でもさかんに使われてきたということで、知っている方もいらっしゃるかもしれません。


今回はこちらの電子書籍版を発見して読みました。2022年に電子書籍版として出版してくださったようです。

知性を豊かにすることは心技体すべてを強くすることと繋がっていることがよくわかる1冊ですよ。


こんな人におすすめ

  • 生涯続く学びの心得を身につけたい人
  • 生き急いでいるのをやめたい人


概要          

文章の構成          

ハマトンさんの考える、知的生活を送る秘訣がまとめられています。

「知的生活」がどいうものかというと、ここでは学者・何かを研究し人に教えるような立場の人が取り組む生活を指しているようです。しかし、書かれていることは非常に普遍的です。

P5 知的に生きるとは、何かを成し遂げるということというよりは、むしろ一種の精神状態である。

と語られている通り、

  • 自己修練とは何か
  • 己の精神を鍛えるために何をするか
  • 勉強はどうやるものか

といった学びに対する姿勢を主にまとめています。


1つ1つの章は、「○○に悩む人へ」という副題がつけられ、悩める若者への応援の手紙のようなつくりになっています。



知的生産は健康に左右される   

P24 順調な知的生活は、順調な肉体の働きに左右されるものだ

とカントの言葉を引用し、偉大な学者たちがどんな生活をしていたのかを紹介しています。

  • 食事の摂り方
  • 睡眠のとり方
  • 几帳面はどこまでか
  • ビールやワインの飲み方
  • 運動の仕方

などなど。今でも大事にするべき健康法がわんさかと載っているのです。

はるか昔から、知的労働に集中しすぎて書斎に閉じこもり、運動不足になって単調な生活を送る学者が病気になりやすかったということがわかります。


P45 頭も身体も規則正しく訓練しなければ効果はない

とまで言い切っている。両者を調和させることが知的生活への第一歩なのです。



精神力を鍛えることが知的生活に必要

ハマトンさんが教える知的生活は、

  • 日々の努力
  • 規則的で無理のない暮らし
  • 感覚を研ぎ澄ますこと

が基本にあります。

P89 成就すべき大望がある時、人はその大望のために自制心を働かせ、官能の誘惑と闘うことになる。

と述べているように、目的を持って律する生活を勧めています。


学びのために生活を整え、生活が整うと精神が鍛えられ、精神が鍛えられると学びが深くなる…というのがハマトンさんの知的生活です。ただ単に知識を多くすることを勧めてはいません。



古代の人の勉強法はシンプル    

記憶にのしかかる重荷は着実に増えているのに、記憶力はよくなっていない。

祖先たちは一つひとつを学んで身につけたけれど、私たちは一気に5個6個と学ぼうとしているのが良くない、とハマトンさんは言います。まずひとつ。集中して深く潜ろう、と。


よくわからないまま、たくさんの何かを与えられてそれを学ぼうとする。これでは自分が望む方向には進めません。そもそも望みすら見失う。

そして、あれもこれもと手を出し、結局何一つ形にならない。

自分の生きてきた環境から見つけた1つの探求を深くしていくのが大切ですね。


P168 実際問題として、何かを記憶に刻みつけるには二通りの方法しかありません。感情に鮮烈な衝撃を与えて覚えるか、あるいは、繰り返し時間をかけて覚えるかのどちらかです。


ハマトンさんの教える知的生活の心得は、近道を行く方法ではありません。読書なら乱読、語学なら数年の現地での生活…量なしには得られないであろうことのほうがあるのです。だからこそ、量を確保できるように日々の生活は規則正しくあらねばならない。

生活を整えることが知的努力に報酬をもたらしてくれる。

ということを忘れずに、日々の生活を彩る学びを続けてまいりましょう。

ただし、それが役に立つもの・必要なものであるかどうかが軸になくてもいい、というのを忘れないでください。自分自身を豊かにすることは心を自由にしてくれます。何にも代えがたい価値がある行為なのです。



感想          

古代ギリシアの教育法の章の中で、

P106 日々を楽しく、入念に愛情をもって隅々まで研究する。

という言葉がありました。ハマトンさんもこれを羨むべき知的生活と言っているように、私もぜひ目標にしたい学びの姿勢だと思いました。


何かを得ようと思って努力しているとき、なかなか結果が見えない・完成しない状況というのは焦燥感がつきまといますが、期待したり、不安になったりしていては冷静ではいられなくなります。焦らず、ゆっくり、でも着実に、積み上げていく。いきなり山を登ることはできないのだと言い聞かせて、登っていくのが知的生活だとなのでしょう。


登る山を間違えるときもあるでしょうが、時々振り返ってよく眺めてみる。間違えたらやり直す。それでいいのだと思うと、ちょっと気が楽です。

誰かが幸運にも間違いを指摘してくれることもあるでしょう。わからなくなったら頼ればいい。それでも、決めるのは自分自身の責任なので、闘いは常に孤独かもしれません。



まとめ         

  • 規則正しい生活が知的生活の第一歩
  • 没頭して学びに取り組む時間をつくる
  • 自分にとって重要なものを選択できる自分になる

健全で爽快感のある暮らしのためのバイブル。かわいいフクロウの表紙も素敵ですよ。

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