スピリチュアルズ「わたし」の謎
スピリチュアルに合った自分の物語をつくる
今日ご紹介するのは、” スピリチュアルズ「わたし」の謎(橘玲 著/幻冬舎)”です。
「スピリチュアル」と聞くと、科学で証明できていない部分の知識・経験の紹介であるかのように感じる人がいらっしゃるかもしれません。しかし、こちらの本では、
スピリチュアル=無意識が創造するパーソナリティ
として言葉が使用されています。
様々な研究が証明してきた、人間の無意識的な行動。それらが形作る人格=パーソナリティを理解し、自分と他人との向き合い方を見つめ直す。そんな1冊になっています。
こんな人におすすめ
- 自分の性格診断をしてみたい人
- 人間の無意識的な行動に興味がある人
- パーソナリティをビジネスに活用していきたいと考えている人
概要
本書で紹介されているパーソナリティの分類
徹底的に社会的な動物。それが人間であるとこの本の中では説明されています。動物が社会性のもとにどのような行動をとるのか?それを理解することは、人の感情を理解することでもあるでしょう。
1980年代には心理学者ルイス・ゴールドバーグさんが5つの因子「ビッグファイブ」を発見しました。
①外向的/内向的
②神経症傾向(楽観的/悲観的)
③協調性(同調性+共感力)
④堅実性(自制力)
⑤経験への開放性(新奇性)
本書では、これらをさらに広げ、8つの因子「ビッグエイト」でパーソナリティを説明していきます。
(1)外向的/内向的:明るいか、暗いか
(2)楽観的/悲観的:精神的に安定しているか、神経質か
(3)同調性:みんなといっしょにやっていけるか、自分勝手か
(4)共感力:相手に共感できるか、冷淡か
(5)堅実性:信頼できるか、あてにならないか
(6)経験への開放性:面白いか、つまらないか
(7)知能:賢いか、そうでないか
(8)外見:魅力的か、そうでないか
人格(パーソナリティ)は実は他者の評価のフィードバッグに過ぎない。
なかなかインパクトのある言葉ですが、確かに、私たちは自分たち自身を他人を通してでしか判断できないとすれば、
こころの動き・その結果の行動は操作できると考えても間違っていないでしょう。
人間の無意識を活用して勝利したトランプ元大統領
随所に登場するのがトランプ元大統領のお話です。
彼は成功したビジネスマンですが、政治家ではないし、突飛なアイディアにあふれ、明らかに度が過ぎていると思われる行動をとってきました。だからこそ、多くの人が彼は当選しないと考えていたのです。
ところが蓋を開けてみたら…根強いファンを獲得し、大統領へと押し上げられていきました。
その背景に、FacebookなどのSNSを活用した「パーソナリティ分析」があったというのです。
何の記事に「いいね!」しているかを分析していくと、どんな広告なら響くのかがわかってしまうくらい、脳科学・心理学的な分析力は高くなっているらしい…なかなか衝撃的な事実です。
P64 わたしたちは、ものごころついてから、「自分のキャラを発信し、相手のキャラを読み取る」という社会ゲームをえんえんとやっている。
このゲームを利用することで、商品を買ってもらうためのベストな方法を選択できる。「いいね!」をすることは、もはやとんでもない個人情報が抜き取られることであると言っても過言ではありません。
ビッグエイトを丁寧に読み進めよう
人間の性格・思考の偏りは、8つの要素を組み合わせていくと大部分がわかってしまう。人間、自分のことを簡単にカテゴライズされたくないと考えるものですが、これだけシンプルに表すことができるようになっているのですね。
外界の刺激をどうとらえるか?
外向的なら○○、内向的なら○○、その時の脳内の反応は○○で、薬でどこまで変化させられるかも見えてきている。
どのトピックも気になるものばかりそろっていますので、丁寧に読み進めたいところです。
個人的には、うつや不安障害を抱えた脳の状態がどうなっているか?が非常に面白いトピックでした。
何かが働いていない、というよりはむしろ過剰な反応をしている状態。
過剰な分を抑えてバランスよく整えることができれば、人はみな楽観的で都合のいい人生を送ることができるかもしれません。
しかし、そうはならないのが人間社会です。
1人ひとりの人間が少しずつ違う。DNAと子どもの頃の非共有環境によって形作られた私たちのこころは、みな一様というわけにはいかないのです。
さらには、
P166 集団のなかで一番になることを目指しながら、自分の所属する集団を一番にするというのは、ものすごく複雑なゲームだ。
ヒトは常に、自分と他人を比べて、違いを見つめて生きています。私たちが公正であってほしいと思っている世界は実はものすごく不公平であり、その中で起きる差別、愛のトラブル、自分さがしは困難を極めるということがよくわかるでしょう。
しかし、科学を利用し、知識を得ることでできることがあるし、「わたし」を救うことも殺すこともできる。
ハードな内容ですが、ずっしりとした納得感を味わうことができます。
感想
科学がここまで迫ってきている、という事実に驚くとともに、それをすでに活用してあらゆる成果が出ているのだということにまず衝撃を受けました。
自分の身の回りにある広告、ニュースに操られていないか?読み終えてしばらくは警戒を解くことができませんでした…
また、こころの状態によって私たちは世界をいかようにも解釈することができるのだということもよくわかります。常に、自分の認知がゆがんでいるのだということを忘れないようにしていきたいものです。
世界を正しく見ようなんていう気は起きなくなりますね。世界を見つめて、どう振る舞うかを繰り返していき、そしてそれはいつの間にか終わるんだなと思うと、まさに「諸行無常の響き」を感じます。
まとめ
- 「わたし」の分析はどんどん進んでいる
- 苦しい時ほど自分のパーソナリティを見つめてみよう
- 科学を生きていく人生にうまく活用しよう
たった一度きりの人生という物語を生きるとき、それは唯一無二であり、かけがえのないものだからこそ、悩みが尽きません。そういうときほど、科学の学びはこころを軽くしてくれるはずです。ぜひ、読んでみてくださいね。
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