仕事選びのアートとサイエンス

 転職を重ねて気づいたキャリア形成の本質

2023年も終わりが近づいています。冬の時期というのは読書をするには最高な季節ですし、クリスマス後はNew Year's Resolutionを考える良い時間となるでしょう。

新しい年を迎える前に、転職について考えてみたい人へ、こちらの本↓

”仕事選びのアートとサイエンス~不確実な時代の天職探し~改訂『転職は寝て待て』(山口周 著/光文社)”

を紹介したいと思います。


こんな人におすすめ

  • 転職するかどうか悩んでいる人
  • 仕事選びの方法について体験談が知りたい人
  • 特にコンサルティングや広告業界に興味のある人


概要          

どんな本?          

著者である山口さんの体験に基づき、

P5 仕事選びに予定調和させることはできない。自分のオープンに保ち、いろんなことを試し、しっくりくるものに落ち着くしかない。

という主張をしている1冊です。

冒頭でも述べられている通り、この主張に考察を様々肉付けしていく形で展開していきます。

転職する際のコツやおすすめの企業などを紹介するハウツー本ではなく、「転職」というものをどう考えて、どのような心構えで臨むものなのかを解説している、と言えるでしょう。


随所に登場する偉人たちのメッセージもまた魅力があります。



キャリア形成は偶然だ     

人生の様々な出会いの中で、思いもかけないところから仕事は与えられる。

いや、自分で作っていくものだ!と主張する人もいらっしゃると思いますが、

P27 キャリア形成のきっかけは、80%が偶然である

と本書では述べられています。


特に日本人であれば、「皆と同じ」であることを選択しがちなために転職へのハードルはなかなか下がりません。

人間関係で躓いて致し方なく…

年収をアップさせたくて…

まったく違う環境に飛び込んでみたくて…

など、色々な理由で仕事を変えることを検討すると思いますが、環境を変えてまったく新しい働き方をしようとすることに不安を感じてしまう人も多いようです。


なぜなら、どの仕事を選んだらいいのかがまずわからないからです。リサーチしても、実際に働きだしてみないことには、自分の求める仕事なのか・自分に合った働き方なのかがわからない。慎重で堅実なタイプの多い日本人からすると、わからないものに手を出すのは怖いことでしょう。

また、「好きなことを仕事に!」という風潮も一時期流行しましたが、好きなだけでは仕事になるかどうかわかりません。あんなに好きだったことが、仕事になったとたんに嫌いになるかも…なんてことは容易に想像できます。

逆に、好きではないけど得意だなと思える仕事は案外フィットして長く働くことになったりもするだろうし…いったいどうしたらいいんだろう?


どれだけ綿密な計画を立てたとしても、うまくいくかどうかは誰にもわからない。

このことを念頭に、チャレンジを重ねていくしか方法はないのです。



キャリア・アンカーの考え方   

とにかくやってみよう!という精神は確かに大切ですが、当てずっぽうに何度も転職を繰り返すのは良くありません。

会社に良い印象を与えませんし、ある程度継続してみなければその仕事との相性は見えてこないからです。


そこで本書で紹介しているのがキャリア・アンカーです。

P117 個人が自らのキャリアを選択する際に、最も大切、あるいはどうしても犠牲にしたくない価値観や欲求

真剣に自分の特徴を分析し、転職しようとしている自分自身の内的動機と向き合っていく大切さを教えてくれます。8つのキャリア・アンカーを踏まえて、自分が仕事に何を求めているかを考えてみると面白いでしょう。



好奇心を持って種をまく    

キャリアは偶然つくられるものですが、偶然を引き寄せるには自分自身をいつでも準備OKな状態にしておく必要があります。

  • 他の業種について関心を広げておくこと
  • 自分自身のスキルを磨くこと
  • 未知のモノに対してポジティブに反応できる心を準備すること
  • うまくいかなくてもあきらめないこと
  • 柔軟であること

などなど。精神性を高めておくことで、良き偶然に結び付いたときにチャレンジできるのです。


P99 人生を見つけるためには、人生を浪費しなければならない。

という言葉を、ポジティブに捉えることはできますか?それがこの本のメッセージを素直に受け取れるかどうかを左右するかもしれません。



若いうちに苦労することを勧める  

人は誰しもオンリーワンでナンバーワンだ

という考え方を、筆者はまやかしであると考えています。

自分らしさを求めて自己肯定する度合いが高すぎると、後になって自己否定せざるを得ない状況に追い込まれてしまう可能性が高い。

かわいい子には旅をさせよ、という諺があるように、若いうちに旅をして苦労をすることで、凝り固まらず柔軟で強いしなやかさを手に入れることが、人生を歩いていくときに必要なのでしょう。


本書の終盤は、”自分自身の幸福”について見つめ直し、転職する際に起きるであろう心の問題について解説してくれていますので、まだ迷っている…という人こそ、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。



感想          

本書で非常に素敵だなーと思えるアイディアがありました。

P68 全ての職業人を一旦30歳くらいで雇い止めにして、1~2年くらい遊ばせた上で、再度自分が30~40代を過ごす会社・職業を選ばせるというような仕組みにしたほうがいいのではないか


社会人になって働きだすと、色々なことが変化します。年数を重ねるごとに考え方が変わりますし、自分自身の体力や家族の形の変化もあります。仕事そのものを見つめ直す時間を設けてくれるとしたら、なんて素敵なんだろうと思いました。

また、西欧を真似てがんばってきた日本人ですから、何となく転職を繰り返すのが当たり前のライフスタイルに憧れを抱いている風潮があります。長く働くことも、仕事を様々経験することも、いずれもメリットとデメリットがある。一時の感情の波にのまれず、よく考えて答えを出していきたいものです。


本書のタイトルの意味は、

「仕事を選ぶときには、アートのような芸が必要でもあり、サイエンスに基づく堅実さも必要だ」

ということなのかなと思いました。



まとめ         

自分の人生のステージに合わせて仕事を選ぼう

チャレンジしつつも粘り強く仕事に向き合おう

柔軟で強い精神を育てていこう

転職するかどうか迷っている人にも、何度か転職を経験した人にもおすすめの一冊です。

コメント

このブログの人気の投稿

あなたはあなたが使っている言葉でできている

英語学習:Kevin's English Roomさんの書籍

新版 ハマトンの知的生活