アマテラスの暗号 歴史ミステリー小説

 歴史を公正に見つめるきっかけにしよう

今回ご紹介するのは、”アマテラスの暗号(伊勢谷武 著/丸井工文社)”という本です。

人気作ダヴィンチ・コードでは、キリスト教とそれにまつわる歴史を辿る中で起きるミステリーが描かれていますが、こちらの本はまさにその日本版とも言える作品。

日本の神道が、実は古代にある宗教と関わりを持ち、脈々と日本の歴史に根付いているかもしれない…陰謀論のようでありながら、著者の集めた確かな史実をもとに、日本人に根付く宗教観のルーツに迫る1冊となっています。

※歴史ミステリー小説の括りではありますが、随所に登場する記録・図・写真などは実際に存在するそうです。


こんな人におすすめ

  • 歴史小説がお好きな方
  • 日本の宗教に興味がある方
  • 日本書紀・古事記に興味がある方


概要          

物語の始まり         

『ゴールドマン・サックスの元トレーダーでアメリカ住まいのケンシ・リチャーディーのもとに、警察から父;海部直彦の訃報が届いた。

アメリカ人の母とはるか昔に離婚した父の記憶はぼんやりとしており、自分は無関係…に思われたが、どうやら他殺であったとのことで、念のため他殺体の確認に呼ばれたのだった。

とっくの昔に離れ離れになった父は日本に住んでいたはず。それが、わざわざケンシに会いにアメリカへやってきていたらしい。いったい今更なぜ…?そこから物語は思いもよらぬ方向へ進むことになる…。』



神道の最高神アマテラスをめぐる謎の解明

※↓以下、ネタバレありで進みますのでご注意ください↓※



『ケンシは、母イエナンと話したことによって、父の死に大きな陰謀を感じ取る。父の死の真相を解き明かすために元同僚であるイラージ、デービッド、ウィリアムと共に日本へ渡ることに決めたのだった。

ケンシの父はなぜ死ななければならなかったのか?賢すぎる仲間たちや協力者らと共に、ケンシはその調査にのめりこんでいく。しかし、何者かの手がケンシにも迫っていた…。』


この旅の中で、一般に知られている日本の始まりの神・アマテラスに関して、別の歴史があることがわかってきます。これらは著者が識者や実際の神社の宮司の方々とのお話の中で見つけた事実であり、それらをうまく統合して

「日ユ同祖論」

という説を裏付ける証拠を次々に提示している。そんな1冊になっています。

この「日ユ同祖論」というのは、「日本人の祖先が2700年前にアッシリア人に追放されたイスラエルの失われた十氏族の一つである」という説です。


実際に、明治期にはスコットランド人のニコラス・マクラウドが日本と古代ユダヤの相似性を見つけて体系化をしました。

  • ヘブライ語とヤマト言葉が酷似している
  • 琵琶とラッパが酷似している
  • 古くから、祇園祭の神輿にペルシャ模様の絨毯が使われている

などなど。これでもかという証拠が登場します。


この説は、20世紀の終わりにかなり流行したそうですが、とんでもない理論で荒唐無稽・オカルトだと判断された一方、まだまだ根強い人気がある理論です。

日本とユダヤ(古代のイスラエル)が深くつながっている…と考える親ユダヤ派の考え方でもあります。



他国がこぞって狙う日本の”核”のようなもの

『日本には危機が迫っていた。中国をはじめ諸外国が諜報部員を日本に忍ばせている。日本を日本たらしめるものである”それ”を奪おうとしているのだ…。』


日本は1945年に敗戦国となり、日本にとって不利な条約・ルールを与えられることになりました。しかも、ヨーロッパや大きな大陸で紛争を繰り返してきた諸外国が、日本の伝統や文化を消し去るために”日本の真実の歴史”を消し去ろうとしている…と、この本の登場人物たちは考えています。


著者もまた、

「外国人が優位になるよう、政治的な意図のもとで歴史の認識を押し付けている」

「自分たちの歴史を公正に見つめ、政治思想や個人・団体の利害関係から独立した視点を持とう」

と呼び掛けており、この本はそのメッセージを込めたミステリー小説なのです。

!注意!中国を1つの悪者としてこの本は描いていますが、そこはフィクションなので悪しからず。人によっては中国に対してより悪感情を持ってしまうかもしれませんので、気を付けましょう。


本当に「日本のアーク」なるものが存在するのか否か。真実はよくわかりませんが、日本の歴史に強く興味を持たせるきっかけになりそうですね。



感想(※ネタバレあり※) 

なかなかのボリュームで、凝ったミステリーというよりは歴史書のような1冊になっています。登場する神社は実際の写真が載せられており、また数々の日本とユダヤのつながりを示す証拠をみると、本当にそうなのかもしれない…と思わずにはいられませんでしたね。

入口を意味するアラム語は”トリイ”であるとか、エルサレムの起源エル・シャロームは平安京という意味だとか、淀川はヨルダン川のことだとか…

鵜呑みにしてはならないけれど、なかなかに説得力がありました。


神道への興味も非常に増しました。

自然の恵みに感謝し、五穀豊穣と人々の平穏な生活を祈って、世の中の安寧を祈祷する宗教…受け入れて、溶け込んで、混じっていく。形を変えたとしても、そこに在る。人に近い宗教というよりは、より自然に近い宗教なのかもしれません。仏教ともまた違うマインドのように感じられます。

日本人は無宗教が多くて…という人もいるけれど、神道・仏教・儒教…と根付いている考え方がしっかりあります。それを説明できるような人でいたいなと思いました。


ドキドキ・ハラハラ展開もあるミステリー小説でありながら、日本古来の歴史も学ぶことができる本です。



まとめ          

  • 日本古来の歴史に興味が向く1冊
  • 日本人のアイデンティティって何なのか?考えてみよう

自分のルーツに想像をめぐらし、ドキドキ・ワクワクできる1冊です。ぜひ読んでみてくださいね。

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