東京藝大で教わる西洋美術の見かた
アートの世界の楽しみ方を知ろう
大人になるにつれ、音楽・美術などのアートの世界を愛でる気持ちがあると、心が豊かになるなと思うようになりました。
今日は、”東京藝大で教わる西洋美術の見かた(佐藤直樹著/世界文化社)”をご紹介します。
こんな人におすすめ
- ルネサンス美術が好きな人
- 美術の研究の仕方を知りたい人
- 美術鑑賞を楽しみたい人
概要
文章の構成
「ルネサンスを理解しなければ、西洋美術史の本質をつかむことができない。」
と著者が語っており、当時の有名なアーティストたちの作品を観ながらその手法や時代背景などを著者の視点で紹介してくれています。
あくまで著者である東京藝大佐藤教授の”偏った”見かたであるされていますが、美術をどう楽しむのか・どう紐解くのかを教えてくれる本書は、美術館の楽しみ方を増やす一助となると思いました。
また、ヨーロッパにおけるルネサンスがわかれば、西洋美術の鑑賞眼はかなり鍛えられるとのこと。
実際の絵画、彫刻、石像などの写真をふんだんに載せてくれていますので、何が観るポイントになるのかを学びつつ、その写真を観て自分が何を感じるかにも目を向けながら読み進めてみてください。
美術と宗教は結びついている
P106 中世を通じて人々は世界の終末を信じていました。
キリスト教が広まり、自分たちの世界はいつか滅ぶのだという「終末論」が何度も登場するようになりました。
特にルネサンス時代は神が罰を下しているかのような出来事が起きたようです。
今で言うとただの自然現象であることも、当時は人々が奇跡であると恐れました。
それに伴い、アーティスト達の作品にも影響が出ています。
彗星は世界を終わらせるかのように見えたでしょうし、洪水は人間への罰であるかのように思えた。キリスト教、神と自然、人間たち。当時の人々が何を信じ、何に苦しんでいたのかを透かして観ると、「アートは自分の心を表現するものであるが、その当時の時代背景に大きく影響されるものだ」と気づきます。
絵画はこうやって観る
ルネサンス後のバロック期には徹底的な写実主義がありました。
1枚の絵の圧倒的リアル感。ちらっと見ただけでは気づかないような部分まで正確に描いていることに驚きます。
カラヴァッジョの『バッカス』では、爪に垢がたまっていることや、手の甲の日焼けまでが表現されている…
そこから著者は、
日差しを浴びて仕事をするデルモンテ邸の庭師なのかも
と推測しているのですが、それもまたすごい。
当時の時代背景や、作者の人生、ほかのアーティストたちのことも理解していると、そんな想像もできるのですね。
絵画の中には、表情ひとつ、しぐさひとつ、背景ひとつ、貴重な過去の情報が詰まっているのでしょう。絵画は隅々まで観るものだから、美術館を楽しもうとすると時間がかかる。一度足を運んだくらいではわかって気になれないものだと教えてくれました。
感想
絵画をみたとき、何を感じるか?
何を感じ、何を考えるかは千差万別。正解はないものだと思っていました。
しかしこちらの本を読むと、その作品を作り上げた時代ならではの理由があるからこそ理解できるものがあると教えてくれます。芸術は「個性」があってこそだけれど、それを愛する人や大事だと考えてくれる大衆がいてこそのものでもあるでしょうから、芸術から世界を学ぶこともできると気づきました。
また、想像力は自分が生まれてから出会ったものたちに左右されると思うので、やはり多くの芸術に触れることが美術の楽しみを深めるだけでなく、人生を豊かにしてくれる気がしますね。
まとめ
- 1つの作品に込められた気持ちや歴史を考えてみよう
- 自分だったらどこに着目するかも見つけてみよう
こちらの本と併せて、以前紹介した本「13歳からのアート思考」も役立つと思いますので、読んでみてくださいね。
https://www.otonadokusho.com/2022/05/13.html
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