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Winny 天才プログラマー金子勇との7年半

嘘のような本当の弁護士の闘い 久々の投稿となります。今日ご紹介するのは、 ”Winny 天才プログラマー金子勇との7年半(壇俊光 著/インプレス NextPublishing)” という本です。 1人のプログラマーが冤罪にかけられ、その無実を証明するために奔走した弁護士の実話。現実はよっぽど小説より奇なりだと感じさせられる1冊で、ドラマティックな仕上がりになっています。 こんな人におすすめ プログラミング技術に興味のある人 小説風の実話がお好きな人 弁護士知識のある人 概要           あらすじ            金子勇。栃木県に生まれた彼は、小学生の頃に出会ったマイコンに衝撃を受け、プログラムの世界へと没頭していく。そして電子掲示板「2ちゃんねる」にWinnyというプログラムの開発を宣言し、当時の最先端として時の人となる。それが彼の、逮捕のきっかけとなるとは思いもよらなかった… この物語は、プログラマー・金子勇さんという人物を弁護することになった壇俊光さんの目線から展開されていきます。 弁護士としての仕事のこと、プログラマーという仕事のことも垣間見ることができますし、弁護士の立場から見る検察・裁判所の姿や、双方の思惑なども知ることができるので、ある意味貴重な資料ともいえる作品です。 いかに金子勇が「プログラム馬鹿」であったのか 世の中に良いものを生み出したいという純粋な気持ちを持っていただけ ということを表すため、金子さんの面白エピソードが随所にちりばめられたコメディ感もある語り口は、クスっと笑わせてくれたり、時にほろっと感動させてくれたりします。 そんな彼がなぜか逮捕されてしまい、「著作権侵害を幇助する」という罪で法廷で裁かれることとなるのですが、その背景にはいったい何が…?注目です。 弁護士の仕事          壇さんの弁護士としての闘いを細かに説明してくれているため、法の専門用語が満載です。そのためやや理解しにくいと感じる人もいらっしゃるかもしれません。 また、プログラマーの弁護ということで、界隈の知識を知らずして闘うことはできません。プログラミングに関するワードも満載ですから、なじみのない人にとっては読み進めるのが大変かもしれませんね。 注釈や参考として補足をしてくれてはいますが、よくわからないところはスルーしても良いでしょう。それでも十分...

英語学習:英語の気配り

 英語ネイティブが常にカジュアルな話し方をするわけじゃない ここ何回かは英語関連書籍をご紹介しています。 今日ご紹介するのは ”英語の気配り マネしたい「マナー」と「話し方」(マヤ・バーダマン著/朝日新聞出版)” です。 「日本人って英語話せないよね」 と言われる理由はさまざまあるようですが、その中に 「日本人って丁寧で礼儀正しいって言うけど、英語を話すと失礼だよね。」 という意見があるのです。 この本を読むまで、 「自分は英語のネイティブじゃないのだから、英語は通じればいい。」 という気持ちがありましたし、そのように会話を組み立てていました。 しかしよく考えてみたら 「人に気遣い・気配りをする」 という態度は人間共通じゃないか、と思い直し、言葉の選び方を考えるようになりました。 こんな人におすすめ 相手に失礼のない英語を使いたい人 英語の文化を知りたい人 自分の英語のブラッシュアップを図りたい人 概要           英語の敬語           英語にだって敬語はあります。 まずこの点で、今までそう考えていなかった人は一つ見方を変えるきっかけになるでしょう。日本語のように「丁寧語」「謙譲語」「尊敬語」があるのでなく、 コミュニケーションの方法に工夫が必要になる ということを学ぶことができます。 冒頭 P20~P30 に示されている一覧だけでも、確認しておくとよいでしょう。丁寧な英語へ1歩前進できると思います。 ①クッション言葉で柔らかくする ②リクエスト形式にする ③つなぎ言葉で流れをつくる ④単語を「格上げ」する ⑤「波」で変化をつける 個人的には、⑤「波」で変化をつける の中にある P27 Friendly but polite(親しみやすいけど丁寧) をねらおう、という言葉が印象的でした。自分の目標にしようと思えましたね。 誤解される日本人の英語      チャプター2の「誤解される日本人の英語」というまとめもぜひ一読してほしいと思います。 日本人が使いがちだけど、それ失礼ですよ?という表現がさまざま登場するコーナーです。 特に気を付けたいなと思ったのは、 Of course の使い方。 実は、Of courseの意味には、 「もちろん!(当たり前です!どうしてそんな当然のことを聞くの?)」 という意味があるそうなのです。 何気なく、いいよ!...

英語学習:TOEIC L&R高得点対策の書籍

800点を超えるならこの書籍 今日ご紹介するのは、 TOEIC対策本 です。 「テストで高得点を取ることが英語運用能力の証明になるとは限らない」 というお言葉もありますが、数々の 英語関連の資格試験は英語学習を段階的に進めるために非常に役立つ と私は考えています。 リスニング・リーディング・スピーキング・ライティングの4つの技能には、 単語・語彙 文法 スラングの知識 丁寧語の知識 時事問題・身の回りの出来事についての関心 コミュニケーション能力 などなど。とにかく身につけねばならないことはたくさんあります。 今日は、TOEICのListening&Writing試験対策で、特に高得点領域に入るためには確認しておいたほうがいい書籍をまとめてみました。 こんな人におすすめ TOEIC600点は確保したがそれ以上をゲットしたい人 効率的に点数を伸ばすための書籍を知りたい人 TOEIC L&R 高得点ゲットのための書籍一覧 一つひとつ、簡単なポイントと共に紹介していきます。 世界一わかりやすいTOEIC L&R(関正生 著/KADOKAWA) こちらのシリーズでは、自分の目指したい得点に合わせた模試や対策本が出版されています。下のリンクでは、800点突破のために使った模試を載せておきました。 リンク 良いところ:良質な問題を練習できる/解説が丁寧 苦手ポイント:リスニングの音声が公式とはかなり違うため難しく感じる可能性あり 公式の問題よりもやや難しいかなという印象がありました。こちらで高得点を獲得できるようであれば、かなり自信がつくと思います。 公式TOEIC Listening & Reading 800+(ETS著/国際ビジネスコミュニケーション協会) 公式の問題集です。 高得点を取るのであれば、TOEIC特有の問題群とその傾向をつかむ必要があります。 リンク 良いところ:難問の傾向を知ることができる/練習問題が多数ある 苦手ポイント:難問以外はあまり深く解説されない 個人的に、文法・語彙が苦手なので、Part5と6は点数が低くなりがちです。こちらの本では多数の練習問題があるので、非常によい練習になりました。 ただし、難問以外はたいして解説されないので、いまいちよくわからないけど自分の中で納得させた問題も。T...

英語学習:Kevin's English Roomさんの書籍

 YouTubeで大人気の3人組が出版した英語のお話 私は英語学習の中で様々な書籍を読んできました。それぞれの良さがありましたし、「ここは理解しにくいな」と感じることもありました。 そんな私の経験を踏まえ、英語学習で使った書籍もこのブログで紹介していこうと思います。 前回は2022年3月26日にATSUさんのDistinctionシリーズをご紹介していました。 過去記事: https://www.otonadokusho.com/2022/03/distinction.html 今日ご紹介するのは、私の好きな英語関連のYouTubeチャンネル;Kevin's English Roomさんの書籍です。 ”その英語、本当にあって る?ネイティブならこう答えます(Kevin's English Room著/KADOKAWA)” では、YouTubeで見せる彼らのやり取りはそのままに、ネイティブの感覚をわかりやすく伝えてくれています。 リンク こんな人におすすめ もっとナチュラルな英語の使い方を学びたい人 KERのお三方のファン スラングワードの上手な使い方を知りたい人 ここがおすすめ!ポイント解説 三人の会話の中でリアル英語を学ぶ   こちらの本で特徴的なのは、 疑問を三人の会話のやり取りの中で解決していくという構成 です。 Kevinさん:アメリカジョージア州出身のバイリンガル やまさん:フランス留学などを経験した日本人 かけさん:純ジャパニーズで海外留学経験なし の三人が登場。 日本で使われがち・勘違いされがち・でもリアルでは使っていない・実際は違う…そんなフレーズや言い回しをテーマに上げ、それをバイリンガルのKevinさんに質問してみんなでディスカッションをしています。 「○○って使われないよ」「でも○○ってこうだよね」「え、アメリカってそうなの?!」 彼らの会話を楽しみながら、リアル英語のことを知る。非常に楽しい構成です。 感覚を言語化してくれる      中にはKevinさんでもうまく理由を説明できない表現も登場します。 そんなフレーズについて三人でディスカッションしながら理由を探究していくのですが、 かけさん・やまさんは感覚を言語化するのが非常にお上手。 「なるほど確かに!」と納得できる答えに辿り着くのが素晴らしいです。 彼らのYo...

新版 ハマトンの知的生活

 知力・精神力を高めるための日々の過ごし方 6月も終わりが近づき、2023年も折り返しとなりました。皆さんの今年の目標の進捗状況はいかがでしょうか? 今日ご紹介するのは、 ”新版 ハマトンの知的生活(P.G.ハマトン著/渡部昇一・下谷和幸 訳/三笠書房)” という1冊。 こちらの原著は1873年に The Intellectual Life というタイトルでマクミラン社という会社から出版され、以降絶えず版を重ねてきたという本です。大学に通わず、フランスに定住しながら当時イギリスの代表的な学者・芸術家・作家・詩人に尊敬されたというハマトンさん。彼が織りなす知的生活の心得は、多くの人間に影響を与えてきました。 明治以降、日本の旧制高校や大学の英語教科書でもさかんに使われてきたということで、知っている方もいらっしゃるかもしれません。 今回はこちらの電子書籍版を発見して読みました。2022年に電子書籍版として出版してくださったようです。 知性を豊かにすることは心技体すべてを強くすることと繋がっていることがよくわかる1冊ですよ。 こんな人におすすめ 生涯続く学びの心得を身につけたい人 生き急いでいるのをやめたい人 概要           文章の構成           ハマトンさんの考える、 知的生活を送る秘訣 がまとめられています。 「知的生活」がどいうものかというと、ここでは 学者・何かを研究し人に教えるような立場の人 が取り組む生活を指しているようです。しかし、 書かれていることは非常に普遍的 です。 P5 知的に生きるとは、何かを成し遂げるということというよりは、むしろ一種の精神状態である。 と語られている通り、 自己修練とは何か 己の精神を鍛えるために何をするか 勉強はどうやるものか といった学びに対する姿勢を主にまとめています。 1つ1つの章は、「○○に悩む人へ」という副題がつけられ、悩める若者への応援の手紙のようなつくりになっています。 知的生産は健康に左右される    P24 順調な知的生活は、順調な肉体の働きに左右されるものだ とカントの言葉を引用し、偉大な学者たちがどんな生活をしていたのかを紹介しています。 食事の摂り方 睡眠のとり方 几帳面はどこまでか ビールやワインの飲み方 運動の仕方 などなど。今でも大事にするべき健康法がわんさかと載ってい...

あなたはあなたが使っている言葉でできている

 八方塞がりな気持ちのときに元気をくれる本 人は常に自分と会話をしている そんな言葉から始まる ”あなたはあなたが使っている言葉でできている(ゲイリー・ジョン・ビショップ著/高崎拓哉 訳)” という本。 今日はこちらを紹介していきます。 書いてあるメッセージは、もしかすると一度は聞いたことがある・自分に言い聞かせようとしたことがあることばたちではないでしょうか。第一章から順に読み進めていくと、最後には自然と元気づけられていると思います。 こんな人におすすめ もやもやしているのに行動できないと悩んでいる人 自分を変えたいなと思う人 概要           文章の構成           著者は、 「この本は読者を励ます本だ」 と冒頭で述べています。 複雑な研究結果を引用する本ではありません。ネガティブなことばで自分を不幸にしている人たちへ、救いとなるであろう言葉が綴られています。 自分とのネガティブな会話は P11 ささいな問題を大問題のように見せ、ありもしない問題をつくり出す。 と語り、セルフトークをどう変えていけばいいか?を丁寧に教えてくれています。 できれば第一章から順に読み進めて、 アサーティブなセルフトーク(主張し断定する力強い言葉) の使い方を身につけましょう。セルフトークの威力を学び、自分の現状と照らし合わせながら検討すると良いと考えられます。 言い訳するな~何かのせいにするのをやめよう ○○が悪いから あの人が××だから そうやって言い訳をしても何も改善されない、と著者は告げています。 どんなことが起きても、すべて自分の責任・選択で起きたことだと思えるかどうか?そしてそのあとにどう行動したか? 行動を起こせるかどうかのフェーズで一番の障壁がここだと思います。自分が一番の原因じゃない、と自分で決定づけているときが一番危ないのです。確かに、もらい事故や、突然の疫病など、予想のつかないことはあります。だけど、相手を恨んで、卑屈になっても問題は解決されない。悪いことを解決するには、自分の不安と向き合って勝たねばならない。そして、 ぐずぐずして、おびえて、立ち止まるのをやめなければならないのです。 また、基本的に人間は”現状維持”を望んで行動する生き物です。 それなのに、よく考えたら欲しいわけでもないことを、持っていないからという理由だけでなぜか欲しが...

世界初のビジネス書 15世紀イタリア商人ベネデット・コトルリ15の黄金則

世界で最初の『商売術』の記述 ビジネスの本からは色々なことが学べますね。もちろん商売に必要な知識もですが、よくよく読んでいくと、結局は、 人が生きていくときに大事にすべきことが商売に繋がっている と気づきます。 今回は、 ”世界初のビジネス書 15世紀イタリア商人ベネデット・コトルリ15の黄金則(アレッサンドロ・ヴァグナー編/伊藤博明 訳/すばる舎)” をご紹介します。 「世界初」とつくとまずは一読しておこうかと思ってしまうので困りものですが…古代に生きた方々の遺してくれたものには、よりシンプルで、格言的で、生きるのを楽にしてくれる言葉が多くあります。 概要           文章の構成           大きく分けると、以下のような内容です。 15世紀のイタリア・ルネサンス時代について イタリアで活躍したベネデット・コトルリについて コトルリの遺した商売に必要な15の黄金則 コトルリが書いた「商売術の書」が、実は複式簿記について最初に記述したものだったとわかり、会計史の世界で注目を浴びることになったそうです。 コトルリは、 商売が人間の生活にとって有益で不可欠なものである 、と宣言し、両替や為替を積極的に認めていく姿勢を取りました。商人を志す者こそ幅広い知識と情報処理能力が必要だと説いています。 15の黄金則は、現代の読者に伝わりやすいようまとめてくれていますので、非常に読みやすい内容です。 完璧な商人とは         コトルリの考える商人の姿は、まさに 「善」の人間 という印象です。ネタバレとはなりますが、エッセンスをいくつか書き出しておこうと思います。 あらゆるタイプの人物を理解して関係を築く能力がある。 適切な場所を選び、不適切な場所を避けて活動する。 実行力がある。 先を見通す力がある。 時には寝食を削る必要が生じる。 利益は他の者たちにもあげさせる。 商人は友情と愛情において限度を設けなければならない。 商人は多くの知り合いと少しの友人を持つべきである。 無知は邪悪。暇があるなら書物を読め。 清潔で、単純で、都会的な衣服で満足せよ。 こうしてみると、商人として必要なことは人として必要なことでもあるようです。人としての在り方が商売にも影響するのだと教えてくれていますね。 商売が成功しているからといって驕ることなく、質素で、でも行動力があって、愛があ...